聖地キャンディ

キャンディはスリランカ中央部の高原地帯に位置する文化遺産である。1592年からイギリスの支配が始まる1815年まで、シンハラ朝最後の首都として栄えた。王権の象徴であった仏陀の犬歯を祀る仏歯寺(ダラダー・マーリガーワ寺院)を中心に仏教の聖地として多くの巡礼者を集める。

毎年7~8月の満月の日を前に15日間かけて行われるペラヘラ祭では、仏歯を収めた舎利容器が象の背中に乗せられ、仏歯寺を出発し町内を練り歩く。象の行進の他にも、キャンディアン・ダンスと呼ばれる踊りなどが行われる。この祭は15世紀あるいはそれ以前からの伝統を持ち、王権の守護と厄払いを本来の目的としていたという。

また、この聖地キャンディとアヌラーダプラ、ポロンナルワの2都市とを結んだ三角地帯は、そのなかにスリランカで重要な遺跡を多く含むことから、「文化三角地帯」とも呼ばれている。

現在のスリランカは多民族、多宗教を抱える国であり、シンハラ、タミル、ムーアといった民族集団が存在するほか、宗教も上座仏教ヒンドゥー教イスラームキリスト教といった様々な宗教が信仰されている。キリスト教伝来以前は、シンハラは仏教徒、タミルはヒンドゥー教徒、ムーアはイスラム教徒というように民族に宗教が対応していたが、キリスト教伝来以後はシンハラやタミルにもキリスト教徒が見られるようになりその対応関係はくずれた。現在でもスリランカ全体としては仏教徒のシンハラが多数派を占める。

参考文献

・杉本良男(2015)『スリランカで運命論者になる―仏教とカーストが生きる島―』臨川書店

・リチャード・F・ゴンブリッヂ(森祖道・山川一成訳)(2005)『インド・スリランカ上座仏教史―テーラワーダの社会―』春秋社