古代都市シギリヤは、スリランカの中央部に位置するセイロン中央山脈にある中部州マータレーに位置する文化遺産である。父親を殺害して王位を継いだシンハラ朝のカッサパ1世(在位期間:477-495年)は、権力争いで追放した弟の復讐を恐れてこの地に都を築いた。また、殺害した父への供養の意味もあったといわれている。
シギリヤの遺跡は、急傾斜の町と370mの高さに聳える花崗岩「獅子の山(ライオン・ロック)」の頂上の王宮からなる。 カッサパ1世によって5世紀に築かれた宮殿・要塞跡は、高さ約200m、東西約100m、南北約180mの岩山の頂上に存在しており、煉瓦と漆喰で造られた巨大な獅子の入り口から小部屋や階段を辿って頂上まで登っていく。
王の死後は仏教僧に寄進され、僧院として使用されたが、その後、遺跡はジャングルのなかに埋もれてしまい、長らく人の目に留まることはなかった。1875年に麓から望遠鏡で岩肌を見ていたイギリス人が、岩肌に描かれた優しく微笑む美女の姿を発見する。これは「シギリヤ・レディ」とよばれるテンペラ技法で描かれた女性の姿であり、かつては500体を超える像で岩肌が埋め尽くされていたという。半裸の女性が散華する姿は宗教画のようにも見えるが、描かれた目的は定かではない。現在は風化が進み、20体前後が残されるのみである。
また、「シギリヤの落書き」と呼ばれる岩に刻まれた詩は、シンハラ語の文書としては最古のもののひとつに数えられる。その他にも岩山の下からは、噴水を備えた幾何学的な「水の庭園」や、「岩の庭園」の跡が発掘されている。
・NHK編(1988)『海のシルクロード7 仏陀と宝石~聖地スリランカ~』ポニーキャニオン