ジェンネの旧市街は、日干し煉瓦を積んだ上から泥の外壁を塗った「スーダン様式」の建物が立ち並び、調和のとれた独特の景観を作り出している。その象徴となるのは1辺50mを超える巨大なモスクで、千人を収容することができる。高さ20mのミナレット(尖塔)にはダチョウの卵が据えられているが、これは「生命と創造」を表現したものであるという。
ジェンネにはB.C.250年頃から人が定住しはじめ、サハラ砂漠を縦断する交易の中心地として発展した。マグレブや中東からやってくる隊商は、商品だけでなくイスラームの信仰や学問をも伝えた。13世紀にはジェンネ王がイスラームに改宗し、自らの宮殿を破壊して、その跡地に大モスクを建造した。その後も数世紀にわたり、大モスクは宗教・文化の中心地であったが、19世紀に一度壊される。現在の大モスクは、イスラーム指導者の要請により、1906~7年に当時の宗主国フランスにより再建された。
ジェンネでは、年に1度、雨季に入る前に住民総出で壁の補修が行われるが、この行事は、さながら祭のようである。長老の合議で日程が決められると、補修の日には、村人が泥を入れた容器を頭に乗せて、早朝からモスクの周りに集まり、壁から突き出したヤシの木の骨組みを足場にして、外壁に泥を塗り重ねる。
2016年7月、ユネスコはジェンネの旧市街を、治安の悪化により保全が妨げられているとして危機遺産に登録した。また、近年ではコンクリートなどを使った住宅が増加しており、景観保護という観点からも問題視されている。