ドイツ西部、ライン川のほとりの古都ケルンにそびえるゴシック様式の大聖堂。1248年に建造が開始され、実に632年にわたる大工事(途中1560年から1821年には中断)を経て1880年に完成している。
ケルンは、9世紀から大司教区となり、宗教的にも重要な都市であった。1164年には神聖ローマ皇帝フリードリッヒ1世が、三博士(新約聖書「マタイによる福音書」に記されるイエスの誕生の際に参拝した東方の博士たち)の聖遺骨をミラノから持ち帰ったとされ、その聖遺骨が納められている聖堂には、12世紀以降多くの巡礼者が訪れるようになった。また、古い聖堂が火災で焼失されたことも相まって、13世紀にフランスのアミアン大聖堂を手本として現代見られるような大聖堂の建造が計画された。
1560年、内陣のみを完成した形で中断されていた工事が再開されるのは、18世紀末になってからである。フランス革命の影響を受け、カトリックに対する逆風が吹いていた中での工事再開を支えたのは、人々の宗教的情熱というよりはむしろ、大聖堂の歴史性や芸術性が高く評価された結果であるといわれている。