コナーラクの太陽神寺院

1250年頃にガンガー朝のナラシンハ・デーヴァ1世によって建てられたコナーラクの太陽神寺院は、インドのカルカッタ北西にあるオリッサ州コナーラクにあるヒンドゥー教の寺院であり、太陽神スーリヤ(火の神アグニ、雷神インドラと共に三大神の一つ)を祀る巨石積の遺跡である。同寺院はインドにおける太陽崇拝の初期の中心地であり、またオリッサ州の寺院建築の最高傑作とも言われている。

太陽神スーリヤは、インド神話のなかで「7頭の馬が引く戦車に乗り天空を駆ける」といわれていることから、この寺院全体はスーリヤの乗る大きな馬車(戦車)に見立てられている。本殿と高さ約33mの拝殿の基壇の側面に、直径約2.5mの大車輪が12対ついており(1年=12ヶ月を象徴していると考えられる)、その馬車を引く7頭(同じく1週間=7日の象徴)の馬の姿が刻まれている。7頭の馬の像のうち数頭が現存している。朝日の最初の光が正面入口に当たるように入念に設計されており、砂丘を約3mほど掘り下げた窪地に、①舞楽殿、②拝殿、③本殿(高塔)、④脇殿(太陽神姫殿)が東から西へむかって縦に並んでいる。これらの建物の聖域を高さ3m余りの石塁が、縦幅200m、横幅400mの長方形となって囲んでおり、かつて四方に開かれていた門は、1958年の大修復工事の際に3つが取り壊され、現在では東門(獅子門)しか残っていない。

この寺院のもう1つの特徴は、神殿に刻まれた数々の彫刻にある。それぞれのレリーフには男女の性愛の形がさまざまに表現され、そのどれもが天真爛漫な肢体美を描いている。宗教施設にこのような官能的な図像が描かれる理由としては、人間と神の合一を表現したものであるという解釈や、男女の合一をシャクティ(宇宙の根源的な力)の源と考える思想を反映しているという解釈などがある。

舞楽殿は、基壇や列柱の壁面が、みやびな奏楽の天女たちのレリーフで埋め尽くされている。

拝殿は、もとはピラミッド型の屋根におおわれた建物で、その後方に③本殿の高塔(四角の方錐形の尖塔をもった塔、北方型の寺院の建築様式に見られる)が建てられていたが、現在それらは失われ、基壇を残すのみとなっている。この建物の壁面を飾る彫刻群はいずれもミトゥナ像(男女交歓像)となっている。

脇殿(太陽神姫殿)も現在は基壇を残すのみとなっているが、もとはヴィシュヌの神姫であり、歓喜の妃と呼ばれるラクシュミーを祀る祠堂であった。ここにもミトゥナ像やその脇で舞い踊る天女たちの彫刻が見られる。

参考資料

・福田和彦編著(1973)『コナラク太陽神殿』芳賀書店

・BBC(2010)『世界の建築遺産2美しき芸術』丸善出版