スペインの植民地であったフィリピンではカトリックが広く信仰されており、人口の約9割がカトリック信徒であると言われている。1993年に世界遺産に登録されたバロック様式の聖堂群は、中国人とフィリピン人の建築家によって植民地時代に建てられたもので、台風や地震の多いフィリピンの環境に合わせた設計がなされ、土地の材料を用いて造られている。カトリックが現地の風土に適応しながら展開していったことがうかがえる遺産である。
サン・アグスチン教会(マニラ)
マニラのスペイン征服(1571年)直後に建てられたフィリピンの最初のキリスト教教会。聖アウグスチノ修道会がフィリピンで行った布教活動の拠点になった。
アスンシオン教会(サンタ・マリア)
1765年に建てられ、フィリピン諸島北部の布教活動の本拠地として活用された。
サン・アグスチン教会(パオアイ)
1710年に完成。耐震構造を備えており、その様式は「地震のバロック」とも呼ばれる。
ビリャヌエバ教会(パナイ島)
要塞の機能も兼ね備えたバロック様式の教会として世界的に知られている。18世紀末に監視所としてミアガオ市の一番高い場所に建てられ、ムスリムの襲撃から町を守る役割をはたしたといわれている。
聖堂内には幼いキリストを背負って川を渡ったことで知られる聖クリストフォロスの伝承がフィリピン風にアレンジされて描かれた壁画がある。そこでは、聖クリストフォロスが先住民の衣装をまとった姿で表されており、キリストを背負いヤシの木に寄りかかっているという場面が描かれている。