莫高窟

敦煌石窟や敦煌千仏洞とも呼ばれる莫高窟(ぼっこうくつ)は、中国北西部の都市、敦煌の中心部から南東に25kmに位置する世界でもっとも大きい仏教石窟寺院である。その全長は1,600mに及び、500以上の洞窟がある。洞窟内には2,000を超える仏像が安置されて、個々の洞窟内を覆う壁画の総面積は、45,000㎡にのぼる。

敦煌はシルクロードの中継地点として発展したオアシス都市で、西方からもたらされた文化や物資はこの地を経由して中国各地へ伝えられた。仏教もまた、インドから中央アジアを経て敦煌へと伝わり、中国に広まることとなった。こうした地理上の性質から、莫高窟の彫刻や装飾にみられる様式には、古代インドおよびガンダーラの影響をはじめとして、テュルク系民族やチベット、そのほか中国の少数民族の影響も認められ、他に類を見ない仏教遺産となっている。

莫高窟の造営は336年に開始された。その後、石窟や寺院が本格的に建造されたのは5世紀から14世紀にかけてである。実に1,000年の歳月をかけて今見られるような形となったということになる。その後、次第にその存在は顧みられなくなっていったが、1900年に石窟内から5万点以上の経典や文書、絵画、刺繍が発見され、再び注目を集めるようになる。それらの資料は「敦煌文書」として知られる。敦煌文書には仏教、道教儒教の経典をはじめてとして戸籍などの歴史的資料に至るまで多岐にわたる文書が含まれており、学術的価値が非常に高い。

1900年にその存在が知られて以来、敦煌文書は海外の探検家や研究者たちの高い関心を集めるようになり、彼らによって国外に持ち出された。現在は、大英図書館、フランス国立図書館、サンクトペテルブルクの東洋研究所などに一部が所蔵されている。日本からは浄土真宗本願寺派の法主であった大谷光瑞によって組織された大谷探検隊が1910年~1914年に敦煌に入り文書を入手した。その一部は現在龍谷大学図書館が収蔵している。

参考文献