サハラ砂漠の西端に位置する4つの隊商都市(キャラバンサライ)は、北アフリカからサハラ砂漠を抜け、西アフリカに通じる3000kmにも及ぶ交易の中継地として、11~12世紀頃から繁栄した。都市は肥沃な谷間やオアシスに形成され、金や象牙、塩をラクダに乗せ、サハラ砂漠を往来するキャラバンが都市に莫大な富をもたらした。
同時に、それらの諸都市はイスラーム文化を代表する宗教的拠点としても発展した。中でもシンゲッティはイスラーム第7番目の聖地とされ、西アフリカ地域からメッカ(マッカ)に向かう巡礼団の集散拠点であった。11世紀頃から周辺地域のイスラーム文化人が集まり、1万冊以上の古文書を擁する図書館やイスラーム大学も現存する。
また、ウワダンは1141~42年に3人の聖職者によって建設された後、西サハラ地域の商業の一大拠点として発展したものの、1450年の党派間抗争によって当初のモスクは破壊された。
それぞれの都市の旧市街は、角形のミナレットを有するモスクを中心に、中庭とテラスを備えた典型的なイスラーム様式の家屋が路地に立ち並ぶ。西サハラの遊牧民の伝統文化と生活様式を今に伝えている。