エトルリア人の集落として建設されたフィレンツェは、11世紀頃より政治・経済面で成功をおさめるようになり、12世紀には自治都市（コムーネ）として独立を宣言する。当初の司教座教会であったサンタ・レパラータのほか、サン・ジョバンニ洗礼堂、サン・ミニアート・アル・モンテ聖堂、サンティ・アポストリ聖堂など、多くのロマネスク様式の聖堂がこの時期に建設された。

都市はさらに拡大を続け、下層民の居住する都市辺縁部には貧民救済のため、托鉢修道会を中心に、多くの修道会が修道院を建設した。代表的なものとしてドミニコ会のサンタ・マリア・ノヴェッラ聖堂、フランシスコ会のサンタ・クローチェ聖堂がある。同時期に、新しい司教座聖堂となるサンタ・マリア・デル・フィオーレ聖堂も着工している。この時代のフィレンツェで活躍したのが、フレスコ画の手法を生み出した画家のジョットや、『神曲』の作者であるダンテ・アルギェーリである。

15～16世紀にはメディチ家の庇護のもと、経済、文化両面で栄華を極め、フィレンツェはルネサンス芸術の中心となった。建築家のブルネレスキ、アルベルティ、画家のマザッチオ、ウッチェロ、ボッティチェリ、彫刻家のドナテッロ、ギベルティ、ミケランジェロ、ダ・ヴィンチなど、数多の芸術家を輩出し、その作品の数々は博物館に展示されているだけでなく、教会や街角など至る所で見ることができる。

【主要な建造物】

・ サンタ・マリア・デル・フィオーレ聖堂は、1296年に建設が始まった司教座聖堂。町の中でひときわ目を引く大きなクーポラ（円蓋）は高さ100mで、ブルネレスキの設計によるもの。鐘楼はジョットが設計した。聖堂の向かいには、ロマネスク様式のサン・ジョバンニ洗礼堂が建つ。工事は160年以上続き完成したのは1461年であった。

・ サンタ・クローチェ聖堂は1294年に建設が始まったフランシスコ会の聖堂。フランシスコ会の聖堂としては世界最大のもので、1443年の増築により、現在の規模にまで拡大された。内部は、ジョットらによって描かれた多数のフレスコ画や、チマプーエのキリスト磔刑、ドナテロの「受胎告知のレリーフ」などで飾られている。また、ミケランジェロ、ガリレオ、ロッシーニ、マキャベリなど、歴史的な人物の墓が多数あることから「イタリアの栄光のパンテオン」との異名をとる。

・ サンタ・マリア・ノヴェッラ聖堂は1278年に着工したドミニコ会の教会。正面の装飾は15世紀にアルベルティが作成した。内壁は、マザッチョによる壁画「三位一体」などで飾られている。

・ ヴェッキオ宮殿の前に広がるシニョーリア広場は、メディチ家による独裁的な政治や奢侈を批判し、共和国顧問として神権政治を行ったドミニコ会士サヴォナローラが、メディチ家が所有した美術品などの豪華な品々を集めて焼いた場所。やがてサヴォナローラは教皇をも批判したことから破門され、厳格で質素な生活を求めたことから民衆の支持も失い、1498年には逮捕され、この広場で火刑に処せられた。1504年、広場には、共和制のシンボルとして、ミケランジェロ作「ダヴィデ像」が設置された。

・ ウフィツィ美術館 →【ウフィツィ美術館に所蔵されている宗教画リスト】参照

・ ヴェッキオ宮殿 →【ヴェッキオ宮殿に所蔵されている宗教画リスト】参照

参考文献