アッシージ、聖フランチェスコ聖堂と関連遺跡群

イタリア中部にある人口2万人強の小さな町アッシジは、聖フランチェスコ聖堂、サン・ダミアーノ教会、サンタ・マリア・デリ・アンジェリ聖堂など、この地で誕生し人々の敬愛を集め続ける聖フランチェスコの精神が今も息づく世界文化遺産の宝庫である。

裕福な商人の一人息子として生まれ放蕩の限りを尽くしていたフランチェスコは1206年、「早く行って私の壊れかけた家を建て直しなさい」という神の声を聞いて回心し、全財産をなげうって廃墟と化していたサン・ダミアーノ教会を再建する。その後布教の座として用いていたポルツィウンコラ礼拝堂、そしてそこで聖フランチェスコが亡くなったとされるトランジト礼拝堂の両者を格納するように建てられたサンタ・マリア・デリ・アンジェリ聖堂など、聖フランチェスコの足跡をたどることのできるアッシジは、キリスト教徒に人気のある巡礼地となっている。

彼の名を冠した聖フランチェスコ聖堂は上下二段に分かれており、上はゴシック様式、下はロマネスク様式になっている。しかし、この聖堂の見どころは建築様式よりもその内部を埋め尽くすフレスコ画にあると言えるだろう。

特に上の教会の壁面を飾るジョットとその弟子たちが描いた「聖フランチェスコの生涯」は圧巻である。それまでのキリスト教会絵画は、現在も東方正教会のイコン画としてその形式を残すビザンチン様式で描かれてきた。神の非人間性・厳格さを表わすために用いられたその硬質な表現はジョットによって大きな転換を迎える。小鳥に説教をしたと言われる愛の聖人、聖フランチェスコの人間的な優しさを、そして聖フランチェスコの死を嘆く弟子たちの悲嘆にくれた表情・しぐさをダイナミックに示した28枚のフレスコ画は、その後花開くルネサンス芸術へとつながるものとして美術史においても重要な意味を持っている。

参考文献

UNESCOのページ

http://whc.unesco.org/en/list/990/gallery/

CERC「映画と宗教文化」のページ

  • 聖フランチェスコの生涯については映画「ブラザー・サン、シスター・ムーン」を参照
  • 映画「薔薇の名前」の主人公ウィリアムは聖フランチェスコが設立したフランチェスコ会の修道士である。彼の粗末な衣服を腰縄で留めただけの姿は全てを捨てて清貧に生きることを旨としたフランチェスコ会を体現していると言えるだろう。なお、聖フランチェスコが実際に着用していたとされるつぎはぎだらけの衣服が聖遺物として聖フランチェスコ聖堂に納められている。

旧市街の壁の聖画

サン・フランチェスコ聖堂

サン・フランチェスコ聖堂

アッシジの町並み(風景)

アッシジの町並み(風景)

アッシジの町並み(夜景)

サンタ・マリア・

デリ・アンジェリ

教会

マッジョーレ要塞