ボリビアの西部にあるティティカカ湖畔南東に位置する古代都市の遺跡。ティワナクは紀元前1580年から西暦1280年まで栄えた巨大文明が残した唯一の遺跡である。当初、農業集落として成立した人口2,000人程度のティワナクは、約2,000年かけて、西暦700年までにティティカカ湖以南の広大な地域を占める大国へと成長した。当時の町には、7万人から12万人が住んでいたと言われる。しかし、旱魃、外敵の侵略、また内乱のため、1280年にティワナク帝国は滅亡する。時期的には、ティワナク文明は南米のもっとも有名な文明、インカ文明(ペルー)が出現する以前に栄えていた文明である。
ティワナク文明の特徴は高度な石工技術を持っていたことである。今でも残っているアカパナのピラミッド(高さは10数メートル、基底部は東南に195メートル、南北に183メートル)、天体の観測所だったカラササヤ(広さは東西180メートル、南北130メートル、高さは数メートル)、また「太陽の門」、「半地下の神殿」などは精密な計測技術、建築技術、金属加工技術を活用して造られている。「宇宙人」の仕業であるという説(エーリッヒ・フォン・デニケン等)が出るほど、ティワナクの技術力は非常に高度なものであった。
ティワナクは当時重要な巡礼先でもあったとみられている。ティワナク文化においては、太陽神と考えられるビラコチャ神が文明の創造神とされた。春分の日に太陽の光はビラコチャが彫刻されている太陽の門と一直線になる。ティワナク人は、宇宙は三つのパチャ(=世界)で構造されていると信じていたとされる。すなわち、天界(アラシュ・パチャ)、現世(アカ・パチャ)と冥界(マンカ・パチャ)である。アカパナピラミッドの三段の階段の形はこの宇宙観を現すと考えられている。 この文明を担っていた民族は謎のままだが、その後に誕生したインカ帝国との関係も指摘されている。謎多き古代遺跡は、現在でも人々の探究心と想像力を刺激し続けている。
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