ノルウェーにあるヨーロッパ最古の現存木造教会。ノルウェーでは12~13世紀の間にこの教会をはじめとする多数のスターヴ(垂直に立った支柱を意味する。樽板とも)構造の聖堂が建てられ、当時建てられたもののうち28棟が現存している。その中でも最古にして最も保存状態の良いウルネスの教会が世界遺産に登録されている。
他のスカンジナビア地域と比べてキリスト教化が遅かったノルウェーでは、キリスト教のケルト・ゲルマン的土着化が強い。ウルネスの教会にはバイキングの伝統的要素を反映した帯模様や柱頭が多くみられ、教会の見た目を特徴あるものとしている。
教会の北側には、蛇のように見える動物がつたに囲まれ、何かの動物に噛まれているシーンが彫られている(以下のUNESCOのリンク先、5枚目の写真)。このシーンが何を象徴しているかについてはさまざまな解釈がなされ、未解決の謎として訪れる人々を惹きつけている。キリスト教的解釈をすれば、蛇は「悪魔」であり、もうひとつの動物がライオン、つまりキリストの象徴である。つまり、善と悪の戦いを描いた彫刻であるといわれる。しかし、北欧神話をもとにした解釈もある。この説によると、つたのように見えるものが実は蛇や龍であり、この彫刻全体は「ラグナレク」(北欧神話の世界の終末)を表現しているという。どちらの解釈が正しいものであるかを証明するのは不可能であるが、観光客の間では後者の説のほうが人気があるという。
景観の美しさのみならず、北欧神話の世界とキリスト教の習合(シンクレティズム)という地域的・歴史的な背景がこの遺産の価値を高めていると言えるだろう。
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