カンタベリー大聖堂、聖オーガスティン大修道院及び聖マーティン教会
イングランド南東部ケント州のカンタベリーに位置するカンタベリー大聖堂、セント・オーガスティン修道院跡とセント・マーティン教会は、イギリスの宗教史にとって非常に重要な役割を担ってきた。
6世紀に建てられたセント・マーティン教会はイギリスの一番古い教区教会である。597年にイギリスでキリストの教えを伝えるために、ローマ教皇グレゴリウス1世によって派遣されたアウグスティヌス(カンタベリーのアウグスティヌスとして知られる)はこのセント・マーティン教会を中心として宣教を行った。翌年には、修道院(ベネディクト会)を創立。この修道院は、ヘンリー8世による修道院解散法によって16世紀に取り壊され現存していないが、セント・オーガスティン修道院跡ではかつての姿を偲ぶことが出来る。
カンタベリー大聖堂は、現在はイギリス国教会の総本山であるが、カンタベリーのアウグスティヌスによって602年に建設された際には、当然ながらカトリックの聖堂であった(イギリス国教会の成立は16世紀)。現在の姿は、ゴシック様式の美しい建築で知られる。この聖堂では、1170年にイングランド王ヘンリー2世と対立していたトマス・べケット大法官が暗殺されている。ベケットはその後、殉教者として列聖され、遺体の眠るこの聖堂には多くの巡礼者が訪れるようになった。チョーサーの『カンタベリー物語』は、こうした巡礼の様子を記したものである。
ヨーロッパの国々の中でも独自の展開を果たしたイギリス国教会の歴史がうかがえる世界遺産であるといえよう。
UNESCOのページ: