カスビのブガンダ王族の墓

カスビのブガンダ王族の墓はアフリカ東部に位置するウガンダの首都、カンパラから約5キロ離れた場所にある遺産である。歴代の王が埋葬されているこの場所は13世紀以来、この地に住むブガンダ族の宗教的かつ政治的な拠り所となっている。

ブガンダ族は15世紀にウガンダ王国を形成しはじめ、イギリスからの独立を果たした1962年から1966年のウガンダの王制廃止までウガンダ王国を支配した民族である。現在、ブガンダ族の人口は約600万人であり、ウガンダ国内で最大多数を占める民族となっている。

彼らの伝承によると、およそ800年前にブガンダ族の最初の王、キントゥが空の神の娘ナンビと結婚し、ブガンダ族をこの地に定住させたとされる。実際には、ブガンダ第35代の王、ムテーサ1世(1886年没)までの期間のウガンダ王国の歴史ははっきりとは知られていない。しかし、埋葬に関する習慣は継承されていた。すなわち、王が他界すると、必ず宮殿から離れている場所に墓と神殿を建て、王の霊を宿すと信じられていた顎の骨をその神殿に納めた。その後、神殿は信仰の対象となり、霊媒の力をかりて家族や後継者が死んだ王と交流する場所とされていた。

ブガンダ族は、王は死ぬのではなく、森の中に消えるのだという信仰を有していたという。一般の人びとがブガンダ王族の墓を直接見ることはなく、訪問者は墓を隠す布の仕切りの前に置かれた土台(墓を再現している)の前で祈りをささげたとされる。

しかし、1886年に没したブガンダ第35代王、ムテーサ1世はそれまでの埋葬習俗を変化させた。生前にムテーサ1世は自分の遺体を宮殿の中に埋葬するように命じ、そして顎の骨だけではなく、全身を埋葬させた。続くブガンダ族の3人の王たち(第38代目の王は1969年没)も同じ場所で、同じように葬られた。さらに、彼らの親戚たちの墓もカスビの神殿の裏側につくられた。

カスビの宮殿は1938年以降何回も改装されたが、2010年に火災で焼失した。なかでも、かやぶき屋根をもつ墓所は燃えやすくもろいために、危機遺産リストに加えられている。

参考文献リスト