琉球王国のグスク及び関連遺産群

沖縄各地では、12世紀前後から17世紀にかけて按司(あんじ)と呼ばれる地方の支配者が石造りの城砦(グスク)を築いていた。世界遺産の中心となるのは首里城をはじめとしたこうした島内各地のグスクである。グスクの内部には拝所が設けられており、その沖縄の信仰世界にふれることができる。しかし、この地の信仰を語る上でもっとも重要なのは、関連遺産として登録されている斎場御嶽(せいふぁうたき)である。御嶽(うたき)とは沖縄および周辺諸島にみられる聖域の呼び名であり、地域の祭祀の中心となる場である。なかでも斎場御嶽は琉球王家にとって最も重要な御嶽であり、現在でも地域の人々の信仰を集める場所である。

琉球王朝時代、斎場御嶽は王朝の最高の祭祀官であった聞得大君(きこえおおきみ)によって掌管されていた。聞得大君とは、国王の姉妹、または王妃に与えられた役職であり、聞得大君をトップとして各地の祝女(のろ)と呼ばれる女性神官たちが組織され王朝時代の祭祀を司っていた。斎場御嶽は聞得大君の就任式が行われる場でもあった。

斎場御嶽では、いくつかの拝所のある参道を登っていくとこの御嶽の中心である三庫理(サングーイ)に到着する。三庫理は、切り立った岩が重なり合うことによって人が通れるほどの三角形の空間が形成されている場所である。その空間を抜けると、12年に一度開催される儀礼「イザイホー」(現在では中断している)で知られる久高島を遥拝することができる。斎場御嶽や久高島は、琉球王国の正史『中山世艦』(1650)の冒頭「琉球開闢之事」において、開闢の神であるアマミク(アマミキヨとも)によって創造された7つの聖地の一部である。

沖縄において斎場御嶽をはじめとする各地の御嶽が重要な聖域であることは現代でも変わりがなく、地域の祈りの空間の保持と観光化とを両立させる試みが模索されている。

参考文献

UNESCOのページ

http://whc.unesco.org/en/list/972/gallery/

博物館と宗教文化のページ

斎場御嶽

斎場御嶽(ユタ)

久高島