聖地アヌラーダプラ

古都アヌラーダプラはスリランカ中北部に位置し、紀元前5世紀から紀元後11世紀までシンハラ朝の都が置かれた。またスリランカ仏教発祥の地でもある。

紀元前3世紀にインドのアショーカ王がマヒンダ王子を派遣したことからスリランカに仏教が伝わり、その説法を聞いたシンハラ朝のデーヴァナンピヤ・ティッサ王がアヌラーダプラにマハーヴィーラ寺院を建立した。以後、寺院やストゥーパが次々に建設され、政治のみならず、宗教の中心地としても発展していく。 王は仏教に改宗し、大塔(ダーガバ)を建てることが事業のひとつとなっていた。ダーガバは、円形の基壇の上にそびえる半球が、単石の円柱列に取り囲まれる構造をした、ストゥーパ(仏塔)と同類の構造物である。

アヌラーダプラにも多くのダーガバが残り、その巨大さから人目を惹いている。完成当初は高さ100mほどもあったという世界最大の仏塔ルワンウェリセーヤ大塔(現在は高さ55m)や、スリランカ最古の仏塔トゥーパーラーマ・ダーガバなどが当時の栄光を物語る。その他にも、アバヤギリ大塔の隣に残る大僧院跡には、食堂や病院、御手洗いの跡などが残り、当時多くの僧侶がそこに暮らしていたことを示している。

また、アヌラーダプラにあるスリマハ菩提樹はティッサ王がインドのブッダガヤの菩提樹(仏陀がその木の下で瞑想し、悟りを開いたとされる)から株分けし、スリランカで初めて植樹したとされている。 スリランカの仏教寺院は基本的に①仏殿(ウィハーラ、仏陀像をまつった仏殿)、②仏舎利塔(ダーガバ、仏陀の遺骨(舎利)をおさめた仏舎利塔)、③菩提樹の三要素からなるが、スリランカ中の寺院の菩提樹の木がすべてこのアヌラーダプラの木から分かれたものだと信じられ、信仰されている。

参考文献

・杉本良男(2015)『スリランカで運命論者になる―仏教とカーストが生きる島―』臨川書店