シュケリッグ・ヴィヒル

ケルト語で「ミカエルの岩」を意味するシュケリッグ・ヴィヒルはアイルランド共和国の南西方の沖合12キロに位置する岩の島である。6世紀から8世紀の間にキリスト教修道院が建てられた。中でも、島の天然石を積み上げて築かれたドーム状の小屋は古代の石造建造物の姿を今に伝えるものであり、この島の大きな見どころとなっている。

アイルランドでキリスト教の宣教活動が本格的に始まったのは5世紀である。6世紀以降には、スコットランドや他のケルト民族の地域で修道院運動が起こり、禁欲的修道生活の場としての修道院が全土に建設されるようになった。そうした流れの中で、シュケリッグ・ヴィヒルにも多い時で十数人の修道士たちが生活するようになった。

この島の修道士たちが実践していたような、アイルランドにおける初期キリスト教はケルト系キリスト教ともよばれる。島内では円を組み合わせた十字架等、当時のケルト系キリスト教の遺産を現在でも認めることができる。 16世紀以降修道院として使われなくなったものの、巡礼地としてみなされるようになった。また、交通が不便な孤島という条件は、島内の古い建造物の保存には適したものであった。地域や時代によってさまざまな多様性を見せるキリスト教受容の在り方の一端を見てとることが出来る世界遺産であるといえる。

参考文献リスト