コラム97で述べたように固体中の電子は「バンド構造」をとっています(図97.1)。エネルギーバンドには,電子が詰まったものと,詰まっていないものがあります。詰まったエネルギーバンドは「充満帯」といいます。詰まっていないバンドは伝導帯といいます。充満帯の電子は電場がかかっても動きません。しかし,エネルギー帯に電子が部分的に詰まった状態ですと,電場をかけると電子が動きます。これが,金属です(図98.1)。絶縁体は充満帯の上の伝導帯が空になっています(図98.1)。この状態でバンドギャップが狭いものを「半導体」といいます(図98.1)。半導体では,温度が高くなると,充満帯の電子の一部が伝導帯に上がることができます。
半導体に不純物をごくわずか含ませる(ドーブするといいます)と,バンドギャップ間にエネルギー準位ができます。例えば,4個の結合の手をもつシリコンの半導体にリン(元素記号P)のような結合の手を5つもつ不純物をドープすると,余った電子が半導体中を動こうとします。電子は負(英語でnegarive)なのでneativeの頭文字をとってn型半導体といいます。n型半導体では不純物によるエネルギー準位が図98.2のよう伝導帯の近くでできます。n型の不純物準位は伝導帯の近くなので容易に伝導帯に上がることができます。伝導帯に上った電子は電気伝導に寄与することができます。電気伝導に寄与する電子を供給するので,ドナー準位といいます。トナー(door)というのは,臓器提供者をドナーというように贈与する,与えるものという意味があります。
一方,3本の手をもったホウ素(元素記号B)をドープすると,結合の手が足りなくなった,電子が足りない泡のようなものができます。これを正孔(ホール)といいます。この場合の不純物準位は図のように充満帯のすぐ上にできます(図98.2)。充満帯に近いから容易に充満帯の電子が上がります。不純物準位に上がった後に充満帯に穴ができます。これが,正孔(電子の孔)で,あたかも水の中の泡のように動くことができます。この時の不純物準位は電子を受け入れるためにアクセプター準位といいます。
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