さて,浮力というと,比重の軽いものが水に浮かぶことを考えるかと思います。「水の中にものを入れるとそのもので排除された水の重さ(重力の大きさ)分の浮力」がはたらきます。空気の場合も同様です。これがアルキメデスの原理です。
これは,次のように説明できます。図41.1のように,水の中に点線で囲まれた領域があるとします。そうすると,点線の外側の部分は,内側の部分を押しています。深いところほど力が大きい(矢印が長い)ので,点線で囲まれた部分の外側から働く力(が合わさったものは上向きの力となります。これらの力を足しあわせたものが点線の中側の部分の重さの水を支えるちからと同じになります。もし,点線の囲まれた部分におもりがあったとすると,外側から受ける力はおもりがなかったときに,点線の外側の水が押すちからとそれぞれの部分でおもりがない場合と同じになります。そうすると,外からから働く力(浮力といいます)は,ちょうどおもりが水に置き換わったときの重さを支えるちからとなります。そこで,「物体に働く浮力の大きさは排除された水の重さ(水を支える力の大きさ)に等しくなります」。これを「アルキメデスの原理」といいます。
氷は,水よりも密度が水よりも少ないから水の上に浮かびます。氷の重さと氷によって排除された水の重さは等しくなります。氷が解けると水になります。ですから,氷が融けても水面はかわりません。地球温暖化で北極の氷が融けると水面が上がると思うかもしれません。でも,実際はそのようなことはないのです。
アルキメデス(B.C 287~B.C. 212)は,黄金の王冠に混ぜ物がないか確認するように王様から依頼されました。密度を調べればよいことはわかっていましたが,王冠を溶かして体積を調べるわけにはいきません。そこで,このような複雑な形の体積を測ることを考え続けていました。ある日お風呂に入っていると,水面が高くなることに気づきました。このことから,水面の上昇から体積を測ることに気づいたのです。そこで,アルキメデスは,思わずユーリカ(Eureka [εὕρηκα];「わかったぞ!」の意味)と叫んで風呂から裸のまま町に飛び出したといわれています。
この方法で体積をはかることも可能です。でもあまり精度がよくないことからアルキメデスは次のような方法で密度の違いを調べたのではないかといわれています(図41.2)。まず,王冠と同じ質量の純金を天秤につるしてつりあわせます。次にこの天秤をそのまま水の中につけます。もし,王冠が純金だったら,そのままつりあいます。もしも,純金に混ぜ物がしてあると,密度が小さいために同じ質量でも体積が大きくなります。そのため浮力が高まり王冠の方が上がります。
さて,実験19でアルキメデス原理を用いた密度の測定の実験を紹介しました(図41.3)。この原理について述べることにしましょう。まず,おもりをメスシリンダーの底に置いた場合と,メスシリンダー外のはかりの皿に乗せた場合の重さは同じになります。メスシリンダーの底に置いた場合は,水面が上昇しているにも関わらず,おもりを外に置いたのと同じ重さを示すのです。これは,水面上昇分の重さの増加と,おもりにかかる浮力が釣り合っているからです。このことから,物体にかかる浮力の大きさは,その物体が排除した体積分の水重さに等しいことがわかるのです。
関連動画: 「 気体と浮力」(13分09秒)
関連サイト: 「第5回 熱と気体の膨張と浮力」