アーク放電とは,空気中で高い電圧をかけると,空気中を放電する現象です。このとき,分子は電子と原子核にわかれた「プラズマ」とよばれる状態になっています。
アーク放電は様々なことに応用されています。例えば,アーク溶接という方法があります。溶接するための棒を電極としてアーク放電させて溶接させるものです。「アーク」という言葉は,円や曲線の一部を表す「弧」のことです。もともと,「弧」ということば,弓のように曲がった形状を表します。ほとんど使われませんが,放電したアークのことを「電弧」ともいいます。
稲妻も空気中の放電現象の一つです。稲妻は漢字では「電」と書きます。もとの時は,「雨」の下に「田」が3つある形だったそうです(白川静「常用字解」平凡社; 磊の石のところに田を置き換えた形)。この田を3つ重ねた字自体で,稲妻が放射する形を表していたそうです。電気の電では雷から,下にひげのように出ています。これは,「雨」と「申」を組み合わせたものです。「申」自身稲妻の形を表しています。稲妻という言葉は,落雷するとよく稲が稔るということから来ているそうです。落雷によって,大気中の窒素が田んぼに固定されるため稲がよく稔るのだと言われています。稲が稔るようになるということから,稲の配偶者(= つま)ということで稲妻といいます。いなづまの「つま」は本当は「夫」と書きます。昔の日本語では,「つま」は男女を問わず配偶者(つれあい)のことを言いました。非常に便利でよい言葉だと思いますが,現在では女性配偶者にのみ使われていますよね。
稲妻と雷の音を合わせて「雷電(らいでん)」といいます。雷が電気によるものであることを示したのはアメリカのフランクリン(Benjamin Franklin, 1705~1790)です。フランクリンは,アメリカ独立に多大な寄与をした政治家としても有名です。彼は,1752年,雷が発生するときに凧を上げ,その電気をライデン瓶に貯めることにより雷の原因が電気であることを発見しました。ライデン瓶というのは,オランダのライデン大学で発明された静電気を貯める装置です。雷電瓶ではないので念の為に(ちなみに私は「雷電瓶」だと長い間思っていました)。日本語で「フランクリンが雷の原因は電気だということを発見した」と日本語でいうと言葉の上でおかしい気かしますよね。電気の電が稲妻そのものをあわすからです。英語では,電気のことをelectricityといいます。これはギリシャ語のηλεκτρον [elektron]に由来します。elektronというのは,琥珀(こはく)のことを言います。古代のギリシャ人が琥珀をこすると「静電気」が発生することに気づいたことに由来するものです。
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関連サイト: 「第6回 あかりと熱源の歴史とエネルギー」