私の受験勉強での課題は「机に0秒以上向かえない」「長続きできそうにない」ということでした。これらを解決するためにそれそのものを解決するのではなく,心理的に私にでるきようなことをすることにしたのです。小学校低学年の頃母に「意思が弱いんだから」と言われたことをそのまま真に受けて,自分自身は「意思が弱いダメな人間だ」と信じ込んでいたからです。
受験勉強でやったのは当面の目的を棚上げして代わりの案をつくることです。「机に0秒以上向かえない」ということに対しては,「時間割をつくりそれを守る」ことにしました。具体的には1時間休んで,1時間勉強する。当然,それをやるのはきついことです。そこで,楽しみの時間を先に決めました。つまり,休みの時間になることを先に決めたのです。さらに,嫌いな科目から最初にやることにしました。嫌いな科目を後にすると,そこで嫌になってしまうからです。
「長続きしない」ということへの対策として,毎日「決まった時間に決まった分量だけ学習する」ということにしました。数学は書店で手に入る一番簡単な問題集を選び,難易度の低い問題を最後までやってから,次の段階に行くということをしました。難易度にかかわらず,1時間に5問こなすということにこだわりました。
英語は文法の参考書からやりましたが,例文を5回ずつ声を出しながら書き,1章を1時間でやることにこだわりました。覚えられないということについては,「覚えようとする気持ちを棚上げ」して,「作業」をするようにしました。覚えられないとその時点でいやになってしまうからです。単語カードを50枚つくり,電車の中で見て覚えたと思ったら破ってポケットに入れて,破った分だけの数の単語を加えることにしました。
数学の問題は当然時間内に解けないことがあります。そのような時には,答えを見て逆に答案の筋道を類推するという形で学びました。この方法は,研究などでもむしろ普通の考え方です。はからずも,あまり高校で学べないような考え方を体得することができました。
結局,私の設計した受験勉強システムは時間割のがメインです。勉強をしようとすると,とかくやることを優先で考えがちですが,逆に休憩時間に何をやるかを決めて休憩時間が楽しみになるようにしました。さらに,1回の学習の分量もきっちり決めました。わかってくると,逆にやり過ぎて他の教科がおろそかになると考えたからです。土日休日は一切勉強しないというルールも決めました。さらに,苦手な科目から実施するということも継続するには必要なことだと考えたのです。
以上述べたように,無理に覚えたり,理解したりしないことを大切にしました。先に述べたように時間内に数学の問題が解けない場合は,答えから答案の筋道を考えることにしました。さらに,意識したのは「慣れないように学ぶ」ことです。これは,数学や物理の問題を考えずに解けるようになることを防ぐだめです。将来研究者や技術者になるためには,何よりも「考える力」が大事だと小学生の頃から考えていたからです。
以下,具体的な勉強方法を示します。英語は一番苦手な教科でした,高2の10月の段階で,中学校からの教科書を見直したら中2の単語も怪しい状態からの出発です。まず,文法の参考書からはじめました。参考書の例文を5回ずつ声を出して読み上げながら紙に書き,ちょうど1時間で1章学ぶことにしました。例題も同様に5回ずつ書くということを繰り返しました。英単語は,単語帳に50語書き,帰宅中の電車の中で見て,覚えたと思ったら破り捨て,捨てた語数だけ補充するという方法をとりました。終了後1時間の休憩時間に食事をとりました。
次は数学です。数学も苦手で,何回か0点を取っていました。一番やさしく薄い問題集のA問題(一番易しい問題)から5問ずつ解いていきました。A問題の最後までいったらABを,次にABCというように,全体の基本的なものが解けるようになったら順次難しい問題を解くようにしていきました。必ず1時間で5問と決めましたので,難しい問題は答えを見て逆に解答プロセスを類推するようにしました。決まった時間に決まった問題量を解くのは難しいようでしたが,その気になったら毎回ちょうど1時間で終えることができました。ある意味で,私の「こだわる性格」を利用したのです。この時,教科書以外の解き方を書いた参考書は見ませんでした。但し,問題集の裏表紙の公式集は活用しました。この時強く意識したのは,最初から解き方を考え,慣れないように学ぶということです。数学は考える力を訓練するためにやるものと思っていたので,考える訓練をするためには慣れずに学ぶということが大切だと考えたからです。
私の受験勉強の例をあげてシステムデザインの話をしましたが,目先の目標にとらわれない枠組みづくりが大切です。
教育,政治,企業のシステムはいずれもデザインされたものです。現在,情報システムの発展,世界経済システムの変容,国のあり方の変容などにともなってデザイン能力の大切さが今後ますます重要になってくるものと思います。