アルミニウムの原料は,ボーキサイトとよばれるアルミナ(Al2O3)を50%あまり含む鉱物です。ボーキサイトを水酸化ナトリウムで処理することによってアルミナを取り出した後,氷晶石(ヘキサフルオロアルミン酸ナトリウム,Na3AlF6)とともに高温で溶融して電気分解を行うことによってアルミニウムをつくります(ホール・エルー法)。アルミニウム1トンつくるのに, 13,000~14,000 kWhの電力が必要となります。どのくらいのエネルギーかピンときませんよね。一円玉は1 gのアルミニウムからできています。この1グラムのアルミニウムをつくるのに,13~14 Whの電力が必要です。これは,約5トンの水を1 m持ち上げるのに必要なエネルギーです(物理に慣れている人は電力量Whをジュール単位に換算して,1 kgのおもりを1 m上げるときの仕事が10 Jとして計算できますので,確認してみてください)1円玉ですと,5,000 km持ち上げる時の仕事に相当します。地球の半径は約6,000 km(正確には6,371 km)ですので,いかに多量の電気が必要かおわかりでしょう。もっとも,最後のこの計算は重力が宇宙空間まで一定としてのお話ですが。
とにかく,アルミニウムをつくるのに,ものすごいエネルギーが必要なことはお分かりだと思います。そのため,アルミニウムは「電気の缶詰」といわれることもあります。アルミニウムをリサイクルする場合は,ボーキサイトから作る場合の3%の電力量ですみます。ですから,アルミ缶をどんどんリサイクルすることはエネルギーや資源を節約する上でものすごい効果があるのです。実際,アルミニウムのリサイクルは進んでいて,リサイクル率は90%近くになります。(平成24年度94.7%,平成25年度83.8%,平成26年度87.4%; アルミ缶リサイクル協会データ)。このような高いリサイクル率なので,アルミニウムは「リサイクルの王様」とか「リサイクルの優等生」といわれています。