発電原理説明器(実験38)はコイルの中で磁石を動かすと電流が流れる現象を利用したものです。磁石からは磁力線というものがでています。コイルの中を磁力線が通っても何もおこりません。でも,コイル通過する磁力線の本数(強度)が変化すると,その磁力線の変化を打ち消そうとする方向に電流が流れます。電磁石で知られているように,コイルに電流を流すと磁石になりますよね。コイルを貫く磁力線が変化すると,磁力線の変化を弱める方向に電流が流れます。その結果,反発する力が生じます。その反発する力によって,IHヒーターに乗せたリング状のアルミ箔は浮上するのです(実験36)。アルミ箔のシートが飛んでいくのも同じ理由です。IHヒーターに電線をループ状にした豆電球が点灯するのは,このループを電流が流れるからです。一重のループでも,豆電球が点灯することから,かなり強い磁場が生じていることがわかります。磁場が変化した時生じる電圧は磁場が変化する速さに比例します。そのため,磁場の変化を速くするために,高周波の交流(2万から5万ヘルツ。つまり一秒間にプラスとマイナスが2万回から5万回変化する)を発生されています。テキストでも述べたように,このような電磁誘導を利用してIHヒーターやトランスが作られているのです。
最近,都会の電車やプリペードカードとして使われるICカードは,電池を使わずにタッチするときに電磁誘導で生じる電力を使って作動するようになっています。
磁力線の変化によって,電流が流れるような電圧がコイル中に生じることを示したのは,ファラデー(Michael Faraday, 1791~1867)です。ファラデーは,正規の教育をほとんど受けず,高等数学もほとんど知りませんでした。印刷所の植字工をしながら自分で本を読んで独学したのです。でも,物理学,化学で多くの業績をあげました。電磁気の基礎概念を確立し,マックスウェルによる数学的に確立を導いきました。また,電動機(モーターの原型)の発明,ベンゼンの発見,ブンゼンバーナーの発明,電気化学の基礎の確立など様々な功績をあげています。彼は王立研究所の化学教授職であるフラー教授職とよばれる職に生涯ついていました。彼は,ナイトの称号や王立研究所の会長職に度々推薦されましたが,辞退しつづけたそうです。一般向けの講演も多く行い,現在でも読まれている「ロウソクの科学」(日本語にも複数の翻訳版あり文庫本で読める)は,少年少女向けのクリスマス講演を本にしたものです。