量子力学の発見のきっかけを与えたのは,ドイツのプランク(Max Karl Ernst Ludwig Planck, 1858~1947)(図95.1)という物理学者の研究がきっかけになった光量子仮説です。19世紀後半,ドイツでは鉄鋼業が盛んになりました。その時必要になったのは,高温で融けた鉄の温度を測る技術です。そのためには,高温で光った鉄からでる光のスペクトル(波長毎にどのくらいの強度の割合で光がでているか)でした(図95.2)。
多くの物理学者がこの光のスペクトルを理論的に再現しようとして努力しました。それに対して,部分的に発光スペクトルを再現できる理論はできました。ある理論は,比較的波長が長いところでは実測結果と合いますが,波長が短い所では合いませんでした。別の理論は逆に波長の短いところだけよく合いました。プランクは,ある時,理論計算の中で連続に変化するとして計算すべきところを,光のエネルギーが飛び飛びの値として計算してしまいました(数学の言葉を使うと,積分するところを足し算で置き換えてしまったのです)。そうすると,全ての波長で実測結果にぴったり合う理論式が得られました。2000年の12月,ブランク42歳の時でした。プランクは,理屈が分からずに数学的なおきかえをしただけでした。プランクはその後,自分自身の理論の間違いを見つけようと努力します。アインシュタインは「光電効果」を説明するために,プランクの仮設に対して積極的な意味付けをしました。光のエネルギーは本来飛び飛びの値を持つものだという「光量子仮説」がそれです。その後,量子論について,さまざまな研究がなされ,1925年のシュレディンガーとハイゼンベルク(コラム94, 図94.3)がそれぞれ独立に量子力学を確立します。量子力学は,その後化学,電子工学,原子力工学の発展になくてはならないものになりました。
関連動画: 「 黒体放射と原子から出る光」(6分05秒)
関連サイト: 「第7回 原子から出る光」