前項で述べたようにアインシュタインは,マイケルソン・モーリーの実験をもとに,どのような基準系(物体の位置を記述する基準となる座標系)で見ても光の速さは変わらないという光速不変の原理を基に特殊相対論を提案しました。それまでの力学は,慣性の法則が成り立つ基準系(慣性系)で記述されていましたが,それまでの原理によると互いに等速度で動く基準系同士では光の速さが違うということになってしまいます。アインシュタインは光の速さはどのような基準系でも変わらないということを仮定しました。その代わり,他の基準系から見た時間の進み方や長さが変化するという原理を導きました。このような基準系の間の座標や時間の関係をローレンツ変換といいます。そのため,光の速さに近い速さで動く基準系通しでは時間の進み方が遅くなるということが予想されます。光の速さに近い速度で宇宙船に乗って移動して地球に戻ってくると,浦島太郎のように時間が経ってしまうということがありえるのです。
マックスウェルが提案して電磁気学の基本式はローレンツ変換を満たしています。マックウェルの方程式から光を含む電磁波を導くことができるので,ある意味では当然といるのかもしれません。そのため,アインシュタインは自分自身の業績はアイザック・ニュートンよりもマクスウェルに支えられた所が大きいと述べたそうです。