1) 半導体
LEDは発光ダイオードとよばれますが,その原理を簡単にまとめてみましょう。私たちの身の回りには,様々な固体があります。大きく分けると電気を通す金属と電子を通さない絶縁体があります。原子は原子核の周りに電子が回っています。それらのうち,一部は化学結合に関係するもので,「価電子」とよばれます(図100.1)。例えば,原子が結合して,分子になるときには,電子を出し合って安定することによって,分子ができます。電子が対(つい)になると安定になります。この時,出したりもらったりできる原子の数が決まっていて,あたかも結合の手があるように考えることができるのです。炭素やケイ素だと4本の手が,酸素は2本の手があるといつた具合です。このような結合を共有結合といいます。金属の場合は,少し事情が違います。結合に関わる価電子の一部が金属内を自由に動き回れるのです。そのため,電気を流すことができるのです(図100.1)。
絶縁体の場合は,自由電子はありません。共有結合によって結びついているのです。半導体の場合も基本的には,絶縁体と同じです。ただ,電気を少し通し,温度が高くなると電気抵抗が小さくなる性質を持っています。
半導体の中に少し不純物を入れた場合を考えてみましょう。例えば,電子デバイスで使われているシリコンの半導体を例に考えましょう。シリコンの原子は4本の結合の手を持っています。これに,5つの手を持ったリン(P)や3本の結合の手をもったホウ素(B)をごく少量均質に混ぜます。このようにごく少量均質に混ぜることを「ドープ」といいます。
リンのように5つの手をもった不純物を4本の手をもった原子からできている固体の中に入れると,不純物の5つの結合の手のうち,4つはSiの4つの結合の手をつなぐことができるのですが,5つ目の電子は,Siと結合する手になることでできません(図100.2)。そのため,電子が1つ分余ってしまいます。その電子は金属の自由電子と同じように半導体中を動き回ることができます。このように電子が動き回るように半導体を電子が負の電荷を運ぶので,負(マイナス)の意味のnegativeの頭文字をとって,n型半導体とよびます。
一方,ホウ素のように3つの手をもった不純物を4本の手をもった原子からできている固体の中に入れると,電子1つ分たりません。そのため,他のところから借りてきます。貸したところは,ちょうど水の中の泡のような振る舞いをします。重力があるとき,泡は上に方にうごくとの同じで,この泡は電子をかけると電子とは逆の方向に動いてしまいます。あたかも,正の電荷をもった粒子のように動くので,正孔とよびます。このような半導体は,正(プラス)の電荷をもった正孔が動くので,正(プラス)の意味のpositiveの頭文字をとってp型半導体とよびます。
2) pn接合とダイオード
p型半導体とn型半導体を貼りあわせてみましょう。このように,p型半導体とn型半導体を貼り合わせることを「pn接合」といいます(図100.3)。pn接合された素子を「ダイオード」といいます。n型半導体の中には,動くことができる電子があります。一方,p型半導体の中には正孔があります。両者を貼り合わせると,n型半導体の中の電子はp型半導体の方に拡散します。正孔というのは,水の中の泡のようなものですので。電気の流れに寄与する電子も正孔も間のところでなくなります。このような中間の部分で電子も正孔も無いところを空乏層といいます。空乏層は,限りなくできるかというとそうはいきません。n型,p型といっても,動くことができる電子または正孔があるというだけで,全体では電荷はプラスマイナスゼロになっています。それが,拡散すると,n型半導体側の空乏層はプラスの電気をp型半導体側の空乏層はマイナスの電気を帯びるようになっています(図100.3)。この電荷の偏りによって,それ以上拡散しないようにバランスがとられます。この電荷の偏りが大切なのです。図100.3のように電子,ホールが空乏層に向かう方法に流そうとすると流れます。しかし,逆に動かそうとすると空乏層が帯びている電気の影響で追い返されてしまいます。したがって,ダイオードは一方向に電気を流すことができるという性質があります。この性質を利用して交流を直流にする(「整流」という)ことができます。
pn接合を使って,三極真空管とどうよう増幅の働きをすることができるトランジスタが作られました。さらに,一つの小さなチップの中にトランジスタやダイオードなどを組み合わせた大規模集積回路(LSI; large scale integrated circuit)が作られるようになりました。そのおかげで,コンピュータやスマホがつくられるようになりました。
3) 発光ダイオード
ダイオードに電流を流すと電子と正孔が空乏層にはいります。そうすると,空乏層とホールがくっつきます。このとき,電子と空孔はそれぞれ原子の周りの電子が持っているように半導体と不純物の種類によって決まる一定のエネルギーを持っています。そのエネルギー差に相当するエネルギーをもった光子を発します(図100.4)。これが発光ダイオードの原理です。電子,空孔のエネルギーは半導体の材質によって決まるため,その材質を創りだすのに苦労したのです。
4) 太陽光発電の原理
さて,発光ダイオードでは電流を流したとき,空乏層で電子と正孔がくっつくときに,光を発します。逆に空乏層に光を当てるとどうなるでしょうか。原子に光を当てたとき,電子の周りの電子は高いエネルギーの状態にあがりました。空乏層に光を当てたときには,光のエネルギーを吸収すると電子と正孔の対ができます(図100.5)。このときも,電子と正孔のエネルギー差に相当するエネルギーをもった光を当てる必要があります。空乏層では,図100.5のように空乏層のn型側の部分は,ブラスの電気を帯びているので,電子が引っ張られ,空乏層のp型の部分はマイナスの電気を帯びているので,正孔が引っ張られます。そのため,光を当てたダイオードから電流が流れるようになります。実際に,LEDを使って発電をしてみましょう。
関連動画: 「 LEDと太陽光発電の仕組み」(7分38秒)
関連サイト: 「第7回 原子から出る光」