昨今は,グローバル化が求められていますが,工学教育も例外ではありません。アメリカの工学教育をもとに,国際協定のもとに日本の大学でも「日本技術者認定機構」(JABEE)による認定評価が行われるようになってきました。この中で「技術者倫理」の内容を含むようになっています。但し,どのような内容を学習するのかについては規定がありません。
市販されている教科書などの多くは,事故や不祥事などの事例研究が主になっています。しかし,何か起こった時どうするかを教育しても,学生にとって他所事のような気がします。技術者倫理教育でそのような事例研究を含めることは必要でしょうが,もっと日常的な問題をとりあげ,その時どのように判断するかを考えながら,いざとなった時の判断力をつけることが現実的ではないかと思っています。
多くの人は子どものころに,いろいろないたずらしたり,失敗したりして怒られないかとヒヤヒヤし経験があるでしょう。機械を分解してしまい,なかなか直せなかったけれども,うまく直せたということもあるでしょう。壊してしまったのを黙っていて,後で怒られた人もいるでしょう。場合によっては,自分がやったことを黙っていたら他人のせいにされてしまったということもあるでしょう。このような時にどうするかといった小さいことの判断の経験から倫理の課題を考える力の基礎ができるのではないでしょうか。
社会人になってからも,様々なトラブルがあります。仕事のミスや,人間関係のこじれなど日常茶飯事でしょう。その時にどのような視点で対処するかが大切になってくるものと思います。ミスや人間関係のこじれ以外でも仕事上の様々な判断が必要でしょう。私生活でも様々な判断が必要です。中には,就職,転職,結婚,家を買うなどの大きな決断もえられるでしょう。そのような節目節目でどのように判断するかの力をつけることができるような生活ができるかどうかが,非常時の判断力につながるのではないかと負います。ある意味では,倫理教育は「より良く生きていくためも知恵」の教育といっても良いでしょう(「より良く生きるための技術者倫理」として例えば: https://www.edx.org/course/ke-xue-ji-shu-lun-li-science-engineering-tokyotechx-ethic1jxに無料入門講座があります)。