使い捨てカイロは,今では冬の必需品になっています。カイロのもとは,平安時代から江戸時代末期にかけて使われた石を温めて懐に入れた「温(おん)石(じゃく)」だと言われています。石を懐に入れると聞くと「懐石(かいせき)料理」を思い出す人がいるかもしれません。この「懐石」も温石に由来しているといわれています。懐石は,禅僧が寒さや空腹を凌ぐのに用いた温石が起源とも言われています。現在でも,禅僧は修行中は朝と昼の二食のみです。ですから,夜になってからの空腹を凌ぐ必要があったのです。
さて明治になって麻殻や殿炭粉を袋に詰めたものなどを容器の中で燃やす「懐炉灰」が使われるようになりました。大正時代には,ベンジンの気化ガスを白金の触媒作用で燃焼させる白金カイロがつかわれるようになりました。使い捨てカイロのルーツは,朝鮮戦争の頃,米軍が水筒のような容器に鉄粉と食塩を入れて発熱させたものだと言われています。実際に,現在の使い捨てカイロのルーツは1906(明治39)年に発売されたものと言われています。当時は4ヶ月持つと謳っていたためもあるのか,評判が悪く普及しなかったといわれています。現在の使い捨てカイロが商品化されたのは1978(昭和53)年のことです。
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