消せるボールペンは「マイクロカプセル」とよばれる極めて小さなカプセルの中にロイコ染料,顕色剤,変色温度調整剤とよばれるものを入れたものを使っています。ロイコ染料というのは,酸化還元に伴って,色が変化する染料のことです。消せるボールペンは温度が上がると,色が消えるようになっています。そこでペンの後ろに付いている樹脂でこすると摩擦熱で温度があがり書いたものが消えるのです。逆に温度が下がると,色が再び現れます。室温で消えてしまうと使えないので,もっと低温にしないと色が現れないように,変色温度調整剤で調整しているそうです。実際,ドライアイスで冷やしたり,冷凍庫に入れたりすると文字が現れます(実験30)。開発にあたっては,充分低温にならないと色が発生しないようにすることに苦労したそうです。ちなみに,冷感スプレーをかけても字は現れます。このことは,ある年の教員免許状更新講習での受講者から質問を受けたとき,やってみてわかったのです。このように,講習会や実験教室などで素朴な質問の中から多くのことに気づかせていただけるのです。
私は,消せるボールペンをレポートの添削などに用いています。鉛筆で書いたレポートを添削する時,こすって消すと鉛筆で書いたところがこすれて汚くなります。そこで,ドライヤーであぶって消すこともあります。学生実験などで,コメントした文字をドライヤーであぶって消してみせると学生はびっくりします。もっとも,小中高の先生がテストの採点を消せるボールペンで行うのは問題かもしれませんね。児童・生徒が採点を改ざんすることも考えられますよね。私はテスト答案やレポートを必要性があってスキャナーで読み取って記録しています。最近のコピー機はUSBメモリースティックを差し込むだけで簡単にスキャンデータを記録できます。
感熱紙も同様にマイクロカプセルの中にロイコ染料と顕色剤が入っています。消せるボールペンとは逆に温度が上がると色が現れるようになっています。感熱紙は消せるボールペンのように一度色が着くと消せません。そのため,レシートを保存するときには,すれないように内側に折って保存するとよいのです(実験31)。
消せるボールペンの応用のひとつとして,次のような応用も考えられます。外部の会議や講習会で資料が配られることがありますよね。配布資料に書き込みをするのは,メモとして便利ですが,出張報告書に添付するときに,メモがあるといやなときもあります。そのときには,消せるボーペンでメモをしておいて,ドライヤーで消してから報告書に添付して提出するとよいでしょう。
私は,時々消せるボールペンの芯をだしたまま,ワイシャツのポケットに入れてしまい,ポケットを汚してしまうことがあります。このようなときには,色がついた部分に対してキツめにアイロンをかけると消えます。
関連動画: 「熱と仕事」(10分42秒)
関連サイト: 「第6回 あかりと熱源の歴史とエネルギー」