熱機関が働くためには,なぜ冷やしたり,温めたりが必要なのでしょうか。それは,「自然がそうなっているから」としか言えません。そのように論理的には証明できないが,自然現象の基本になっていることを「法則」といいます。法則は,いくら理屈で考えても証明できません。
学校では「よく考えなさい」といわれます。でも,いくら考えてもわからない。そのため,自分の力がない」と思って物理を諦めてしまう人がいるようです。私自身も,物理は全て考えればわかると思っていました。高校までは物理について考えても分からないのは,高校の教科書では難しいものを省略して結果のみを書いているためにわからないものと思っていました。しかし,かなりあとになってそれは違うことを知りました(これを本当に認識したのは40歳で大学教員になった後のことです)。物理は論理では説明できない「法則」と約束事である「定義」を受け入れて,それらをもとに論理的に考えていくことが大切です。考えることが好きな人程,考えても分からないのは自分に能力がないからだと勘違いして諦めてしまいがちです。小学校で分数を理解できないと悩む人もそういったタイプです。算数や数学に向かないのではなく,適性がありすぎるのです。計算規則は,人が決めたことです。そのように約束したので,そのように計算するのだと最初から教えれば,迷うことはないのです。そのへんをしっかり教わらないために,力があるのに物理を諦めてしまうのはもったいないことです。大学教員になって,学生に「手は頭のうち」といっていました。