「油を売る」というと仕事中に無駄話をしてサボることをいいますね。本来の語源は江戸時代髪油を売る商人が女性客相手に世間話をしながら売ったことに由来するそうです。一説には,油は粘性が高いために,客の器に油を移すのに時間がかかったので,その間に世間話をしていたからだとも言います。司馬遼太郎の「国盗り物語」には,斎藤道三が若いころ油売りをしていたことが書かれています。その時,永楽銭(真ん中に孔が開いた銅銭)をつぼの上に置いて,漏斗(じょうご)も使わずに穴に油がついたら無料にするといって売っていました。昔の人はものを単に売るだけではなく,エンターテイメントも兼ねて,客に来るのが待ち遠しいような気持ちにさせて贔屓(ひいき)の客をつかんだのでしょうね。髪油売りも,女性客の愚痴を聞いたり,相談相手になったり,情報を伝えたりして客をつかんだのではないでしょうか。現在でも,やり手の営業の人は,客に無理に商品を勧めませんよね。色々と相談に乗ったり,顧客の立場に立った話をしたりしながら商談をしますよね。気がついたら商品を買っていたということがあるでしょう。そのあと,またあの人から買いたいという気持ちにさせてしまいます。このようになるには,自分の都合だけではなく,相手はどう考えるだろうと,立場を変えて考える想像力を学校時代から養っておくとよいのではないでしょうか。
あるとき出張先で5時前に目が覚めたので,テレビをつけたら江戸時代の庶民の生活の話をしていました。鬢付(びんつ)け油にはごま油(エゴマとは違います)を使い,風呂には毎日入るのに,女性の洗髪は1ヶ月に一回程度だったそうです。よごれは,細かい櫛でとるのです。さらに,庶民は行灯にイワシの油を使っていたそうです。そのため,生活の中の匂いはすごいものだったろうと言っていました。
関連動画: 「 火を使ったあかりから白熱電球まで」(9分13秒)
関連サイト: 「第6回 あかりと熱源の歴史とエネルギー」