太陽はものすごい明るさで光っています。その光のほんの一部が地球に来ます。そのため,昼間は明るくなります。この光が地球にエネルギーを届けるのです。このエネルギーは,一分間にダンプカー4,000万台の石炭をいっぺんに燃やしたエネルギーと同じです。あまりにも多くのエネルギーなのでピンとこないかもしれません。とにかく,ものすごい量なのです。この光のエネルギーのうち,ほとんどは目に見える光(「可視光」といいます) の形で地面に届きます。地面に届いた光の一部は,地面の上にあるものによって吸収されます。太陽の光はいろいろな色が混じっています。虹は太陽の光がそれぞれの色にわかれたものです。いろいろな物に色がついて見えるのは,一部の色の光が吸収されて,残りの色の光が反射されるからです。吸収された光は,地面にある物を温めます。暖かくなると,赤外線とよばれる目に見えない光が出ます。その赤外線は,地球の外に出ようとします。でも,二酸化炭素があると赤外線を吸収します。そのことで,地球が冷えるのを防ぐのです。同じようなはたらきは水蒸気や雲もしています。福井ではあまりありませんが,冬の晴れた日の朝は,曇った日の朝よりも冷えます(このように晴れた朝冷えるのは「放射冷却」とよばれはたらきによります)。曇った日は,雲が赤外線を吸収して熱が逃げるのを防いでいるからです。このように,地球は二酸化炭素,水蒸気,雲などのおかげでほどよい温度になっているのです。現在,一年間の地球の平均気温は15℃です。二酸化炭素や水蒸気,雲などは地球の「ふとん」のような役割をしているのです。地球をほどよい温度に保つためには,二酸化炭素が多すぎても,少なすぎてもいけません。さっきの実験でみたように,ものを燃やすと二酸化炭素がでます。ものを燃やしすぎると,二酸化炭素が増えてもっと暑くなるといわれています。
現在,空気の中に二酸化炭素が0.035%含まれています。地球ができた最初の頃,ものすごい雨が降ったと言われています。その雨によって海ができたのです。海ができたときの原始地球の大気は60気圧(1気圧というのは,地上で空気が押す力の大きさ)の二酸化炭素からできていたといわれています。その量は,現在の二酸化炭素の量の20万倍にもなります。それが,今は少なくなっていのはどうしてでしょうか(図171.1)。
二酸化炭素が減った理由は,植物が現れたためです。植物は二酸化炭素と水から光のエネルギーを使ってでんぷんや茎や葉をつくります。これを光合成といいます。これを行っているのは,葉っぱの中にある葉緑素とよばれるものです。光合成をすると,酸素を出します。原始地球の中に原始的な植物がたくさん発生したために,酸素が増えていったといわれています。
もう一つ,海の中のカルシウムなどのイオンとよばれるものと二酸化炭素がくっついて石灰岩のような岩石ができたのです。これによっても,二酸化炭素の量は減ったのです。石灰岩は炭酸カルシウムというものからできています。最初に石灰水に二酸化炭素を入れると白く濁る実験をみせましたよね。あの白い濁りは炭酸カルシウムの粉ができたものです。あのようなものが固まって石灰岩などの鉱物ができたのです。たまごの殼や大理石も,炭酸カルシウムからできています。
氷河期というのを聞いたことがあるでしょう。地球上の多くの場所が氷で覆われていた時です。一方恐竜が生息していた頃は,二酸化炭素の濃度(含まれている割合)も今よりも高く,平均気温も10~15℃高かったと言われています。
地球が暖かくなったり,冷たくなったりする原因は二酸化炭素だけではありません。夏と冬があるのはなぜでしょうか?地球は,自分自身も回り(自転)ながら太陽の周りを回って(公転)います。地球は,太陽に対して斜めに自転しながら公転しているのです。そのため,夏と冬で光のあたり方がちがってきます。このため,日本のように北半球にある国では夏は暑く,冬は寒くなるのです。この自転の傾きが少し変わると暑さ,寒さの程度が変わります。また,太陽が出しているエネルギーも多い時と,少ない時があります。それらことが複雑に関係しあって,地球の温度が決まります。また,地球の中の空気の流れや海水の流れが変わることがあります。これらも,気温に影響します。だから,二酸化炭素が増えていっても,逆に寒くなることもあるかもしれないのです。
(コラム171は平成26年7月19日のNPO法人ふくい科学学園の実験教室で使用したテキストから抜粋したものです)
関連動画: 「温暖化ガスと地球温暖化」(9分34秒)
関連サイト: 「第11回 技術の発達と地球温暖化の歴史」