私が化学会社に就職して初めて配属されたのは,高分子に染料をつけて様々な特性を出す色材(しきざい)(染料,顔料などの色を出す材料のこと)を開発しているグループでした。配属された研究グループで当時開発していたのは,ポリスチレンスルホン酸ナトリウムといわれるものからつくった高分子に蛍光染料をつけたものを使った蛍光ペン用のインクでした。高分子にくっつけると色あせ(褪色(たいしょく))しにくいというのが売りでした。その他,ホワイトボード用マーカー用のアルコールにとける色材や,側の染色につかう色材,熱転写インク(当時,プリンタ用として開発されていた樹脂製のリボンにパラフィンにとかした色材を塗って,熱で紙に転写するインク)ようのパラフィンに融ける色材などを作っていました。これらは,太陽の光などで色あせしないかどうかを調べる試験(耐光性試験あるいは耐候性試験といわれる)を行いました。これの試験を行うのに,サンシャインウェザーメーターとよばれる試験機を使っていました。本来,塗料,建材などの耐候性試験を行うものです。太陽の光や雨,結露などでの劣化を調べるために長時間強い光を当てたり,水をかけたりを繰り返すことができる試験機です。私達は太陽光などによる劣化を調べることが目的でしたので,光の照射のみ行いました。この時の光源はカーボン(グラファイト)電極間を放電したアーク灯を数十本並べた周りに試料片を回転させて試験するものでした。電極の消耗は激しいので,毎回のように交換していたことを記憶しています。
アーク灯は,照明として使われなくなった後映写機などに使われていましたが,現在でもサンシャインウェザーメーターは現在でも使われています。(JFEテクノリサーチ株式会社HP)
ちなみ「アーク」放電の「アーク」とは数学でいう「弧」(円や曲線の一部。弓形に曲がった形)のことです。日本語で「電弧」ともいいます。放電して光っているところが,カーブを描き弧状になるからです。
関連動画: 「 火を使ったあかりから白熱電球まで」(9分13秒)
関連サイト: 「第6回 あかりと熱源の歴史とエネルギー」