熱力学は講義で述べたように,第一法則と第二法則が基本法則になります。
熱力学第二法則は「熱は何もしなければ高温から低温に流れる」というものです。人類の夢として,楽に仕事をしたいということがあります。その夢の中で永久機関が考えられてきました。
燃料が無くても動く車や餌を食べずに生きる動物なんてあると良いと思います。でも,これらはエネルギー保存則である熱力学第一法則に反します。エネルギーの供給なしで仕事をするのが不可能だということがわかれば,できるだけ効率のよい,熱機関はできないかと考えることは自然でしょう。その中で,熱機関の効率は理論的に上限があることがわかりました。この上限があるということから,熱力学の第二法則を式で表すことができるようになりました(図151.1)。
熱力学第二法則の役割として,変化の方向が不可逆な現象を説明するということがあります。図151.2に書いてあるような現象は,全て熱力学第二法則で説明できます。そのために,式であらわすことが有効となりました。
物質の融解,蒸発,沸騰などが生じる温度は圧力の条件によって変化します。このことは熱力学によって説明できます。そこで,登場するのが「エントロピー」という量です。エントロピーの定義を厳密にいうと難しいのですが,物質の中の原子・分子の乱雑さの尺度だと思ってください。融解,蒸発,沸騰などの条件を決めるのは,このエントロピーとよばれる量と,物体内部の原子・分子がもつエネルギーである「内部エネルギー」との兼ね合いで決まります(151.3)。
図151.4に示す2つの式を用いて様々な現象を説明することができます。式が出ると難しそうですが,ここでは熱力学の第一法則および第二法則が数式で表されることだけを知っておいてください。
さて,エントロピーについて具体的な例を示しましょう(図151.5)。二種類の原子からなる気体が別々にあったとします。これらが混ざると原子の混ざり方の場合の数は混ぜる前に比べて格段に増えます。図151.5では,模式的に原子が規則的に並んだ絵を書いてありますが,混ぜると場合の数が増えることはなんとなくわかると思います。この増えた場合の数をエントロピーとよばれる量で表すのです。
栓をしたビンの中に閉じ込められた水を考えましょう(図151.6)。ビンの中で水が入っていないところの水蒸気の圧力も,熱力学の理論に基づいて計算することができます。
関連動画: 「 熱力学第二法則とエントロピー」(6分18秒)
関連サイト: 「第13回 さまざまな物質の科学1」