熱気球は気体の熱膨張と浮力を利用したものです(図38.1)。ガスバーナーなどで球皮(エンベロープ)内の空気を温め,外気との密度差によって生じた浮力によって浮かび上がるものです(図38.2)。
浮力を使ったものに,ヘリウム入りの風船や飛行船があります。水の中の泡が上の方に上がっていくもの同じしくみです。それでは,なぜ浮力が生じるのでしょうか。
浮力が生じるのは重力があるからです。空気や水は質量を持っています。これに働く重力を重さといいます。空気や水の重さというとピンと来ないかもしれません。本を重ねたものを考えてみてください。下の方の本は,上にたくさんの本が乗っかっているために,上から受ける力は大きくなります(図38.3)。同様に,水や空気でも,下に行くほど大きい力を受けます。本の場合は,上から力を受けますが,水や空気の中で働く力は上にも下にも働きます。もう少し正確に言うと,空気や水の中にものを入れると,その面に垂直に力が働きます。このような力を圧力といいます。空気や水の中に物を入れると,下の方が圧力が高いため,そのモノに働く力を全て足し合わせると,上向きの力が働きます(図38.4)。その結果,この物の重さが,この物を入れる前の空気や水の重さよりも軽ければ浮かびあがるのです。
さて,熱気球はいつ頃から使われるようになったのでしようか。最初に人を乗せて熱気球を飛ばしたのは,1783年のことです。フランスのモンゴルフィエ兄弟(Joseph-Michel Montgolfier [1740~1810], Jacques-Étienne Montgolfier [1745~1799])によるものです。無人の熱気球は,中国の三国志の時代に蜀漢の劉備(字(あざな)は玄徳)が「三顧の礼」で迎えた軍師として知られる諸葛(しょかつ)亮(りょう)(諸葛孔明; 孔明は字[181~234],ちなみに諸葛が姓です。中国でも,諸葛や欧陽などの二字の姓もあるのです)が天(てん)灯(とう)とよばれる熱気球を飛ばしたといわれています。天灯は,中国やタイなどのアジア諸国で通信手段やお祭りなどで使われています。平成27年7月から放送された日曜ドラマ「ナポレオンの村」の初回で「スカイ・ランタン」としてでてきました。
1852年にフランスで蒸気機関を使った飛行船の試験飛行が成功しましまた。飛行機が使われるまでに,軍用や旅客用としても使われましたが,1937年アメリカ合掌国で起きたドイツの飛行船の水素爆発による「ヒンデンブルグ号爆発事故」以後水素を使った飛行船は使われなくなりました。その後,宣伝用としてヘリウムを使った飛行船などが使われたこともありますが,飛行機の発達とともに使われなくなったのです。
イベントなどでは,子ども向けにヘリウム入りの風船が配られることがありますよね。このような風船に水素やヘリウムを入れたものをガス風船といいます。最近見られなくなましたが,以前はデパートの宣伝に風船の下に宣伝文を書いた布を垂らしたアドバルーンが見られました。日本では,1912年に化粧品会社(中山太陽堂)が初めて使ったといわれています。
関連動画: 「 気体と浮力」(13分09秒)
関連サイト: 「第5回 熱と気体の膨張と浮力」