平成23年3月11日の東日本大震災では,1万8千人あまりの尊い命が奪われました。大変悲しいことです。犠牲になられた方,大切な方をなくされた方々には衷心からお悔やみ申し上げます。現在の日本では,このような一度に大勢の方の命が奪われることは少なくなりました。でも,過去には病気,災害,飢饉,事故,戦争などにより多くの方々が亡くなってきました。現在で,世界中の多くの国々で様々な理由で多くの方が不慮の事態で亡くなっています。この事実は,歴史の中の出来事を含めて改めて考える必要があるのではないでしょうか。
一度に多くの人が亡くなった例として,疫病があげられます。14世紀ではベストが大流行し,ヨーロッパでは,当時の人口の3分の1から3分の2にあたる2~3千万人が亡くなったといわれています。このような疫病による被害も多くの先人の努力のもと,激減してきました。飢饉による餓死の心配も大幅に減ってきました。災害による犠牲者は無くなりませんが,防災工事のお陰で昔に比べるとその数は確実に減ってきました。このことについては,先人の努力に感謝しなければいけないと思います。病気による若年者の死亡も確実に減ってきました。現在では,当たり前のことかもしれませんが,我々が健康で平和に生きられるのもこのように先人たちの努力のおかげなのです。世界には,まだまだまだ防ぐことが可能なのに亡くなる人がたくさんいます。今後とも,人類はそのような防ぎ得る理由で亡くなる方を減らすために,様々な努力を続けていく必要があるものと思います。
授業のために明治のはじめ(1872年 [明治5年])からの日本人の死亡率の推移(年次統計)を調べてみました。こ統計はある意味で私にとってショッキングでした。第二次世界大戦での日本人の死者は300万人あまりと言われています。昭和19年(1944年)から20年にかけての空襲では60万人の方が犠牲になっています(原爆の犠牲者は含むがその後の死者は含みません)。ところが,1945年前後を除いて人口1万人あたりの死亡数は1920年から下がり続けているのです。日清戦争で1万4千人,日露戦争では11万6千人なくなっていますが,人口1万人あたりの死亡者数に影響はありませんでした。多大の犠牲者がでた戦争も統計データに影響しないくらい死亡率が高かったのです。出産時に母子とも亡くなるケースや病死,特に幼い子どもの死亡率が高かったのです。それが,戦後になって劇的に減ってきます。抗生物質の発見や衛生状態の改善,医療技術の賜物でしょう。戦争は悲惨であり,それを教育の中で認識することは重要です。また,なぜ戦争が起こり,それをどうしたら防いでいけるかということを歴史的観点で認識する教育も必要だと思います。その影で,人類の命を脅かしていた細菌やウィルスといった「とっても小さな人類の敵」と戦い,そのおかげを被っていることももっと認識する必要があるのではないかと思います。このように,現在の生活は先人の多大な努力と犠牲の上に築かれていて,そのおかげで現在の生活があるのです。そのような先人と犠牲になった方々への感謝の気持ちをもっと持つべきではないかと思います。皆さんはどのようにお考えでしょうか。
不慮の事態による死亡者が減り,寿命が伸びることによって,世界の人口も爆発的に増加しはじめたのも事実です。まだまだ,国によっては様々な理由による多数の犠牲者が出ています。飢餓に苦しみ人たちは現在でも8億人以上いると言われています。戦闘の犠牲者や医療の不備による病死者もたくさんいます。今後もこれらを無くしていく努力を続けて行く必要があります。その一方で,死亡率の低下は人口の爆発的な増大につながります。それに伴い,様々な問題がでてくるものと思います。これらについても,全体のバランスをとって人類の発展ができるように世界各国が知恵を絞って対応していく必要があります。いろいろ変化が生じてから対応をとるとタイムラグが生じます。先進国では,出生率が下がりました。人口が増え続けているうちは良いのですが,そのうち人口減少がはじまります。すでに日本などの「先進国」では人口減少がはじまっています。そのような,対策に対して時間の遅れが生じ行き過ぎ可能性もあることも頭に入れて将来の世の中をデザインしていく必要もあるのではないでしょうか。そのためにも,私たち一人ひとりが将来の世界・社会をどのように創っていくかを考えていく必要があるのではないでしょうか。