セッ氏で表した温度をq (ギリシャ文字のテータ)で表すことにします(高校の物理の教科書では,tを用いることが多いのですが,大学の物理の教科書では時間と区別するために多くの場合q を用いています)。コラム19の最後で,温度の基準を窒素,水素,不活性ガスなど簡単な形の分子の体積を温度の基準とすることを述べました。温度q における体積をV(q),0℃における体積をV0とします。そうすると図21.1のように,体積と温度の関係をグラフに表すと直線になります。この直線になる関係をシャルル(Charles)の法則といいます。その直線をこの直線を温度が低い方に伸ばすと,273.1°Cで体積が0となります。この時の温度を「絶対0度」といいます。実際の気体は温度が低くなると液体になります。そのため,体積が0となることはありません。でも,絶対0度というのは意味があります。実際これよりも低い温度は存在しないのです。「絶対温度」は,温度差はセッ氏目盛と同じにして,-273.1度が0になるようにしたものです。絶対温度の単位としてケルビン(記号はK)と書きます。式で書くと
(絶対温度の値)=(セッ氏温度の値)+ 271.3 (21.1)
となります。温度差を表すときには,セッ氏温度を使う場合でも,単位としてケルビン[K]を用います。単位「ケルビン」はケルビン卿(William Thomson, コラム23)にちなみます。
実際には,気体の分子は大きさをもっています。また,分子の間には相互作用といって,お互いにはたらく力があります。もし,大きさも,相互作用もない気体分子があったらどうでしょうか。窒素,水素,不活性ガスなど簡単な形の分子は,私達が生活しているくらいの温度では,分子の大きさも,お互いに働く力(相互作用)が無いと考えてもよい状態になっているのです。このように,大きさも互いに働く力がない気体を「理想気体」とよびます。
分子はスライド1-17で説明するように,小さなあばれん坊に例えることができます。小さなあばれん坊の元気のよさ(運動エネルギーの平均値)は絶対温度に比例するのです。絶対温度を使うと,理想気体の体積は温度に比例するのです。
さて,シャルルの法則を見つけたのは,シャルル(Jacques Alexandre César Charles, 1746~1823,フランス)という人です。彼は,はじめて,水素をつめた気球で飛行に成功しました。ゲイ=リュサック(Joseph Louis Gay-Lussac, 1778~1850,フランス)が1802年に気体の体積の温度依存性を定式化,発表したときにシャルルの法則と名づけました。
関連動画: 「気体の体積変化と温度計」(7分47秒)
関連サイト: 「第5回 熱と気体の膨張と浮力」