電熱線の代わりにシャープペンの芯に電流を流してみましょう。シャープペンシルの芯の間の電圧V(単位はV [ボルト])はシャープペンの芯の持っている抵抗R(単位はW [オーム])に電流をかけたものです。式であらわすと
V = RI (54.1)
となります。この関係をオームの法則といいます。オームの法則は,1781年にイギリスのキャヴェンディッシュ(Henry Cavendish,1731~1810)が発見したものです。そのことは,長く知られませんでしたが,1826年にオーム(Georg Simon Ohm, 1789~1854)が再発見して,公表したために,オームの法則といわれるようになりました。キャヴェンディッシュを記念してケンブリッジ大学に設立したキャヴェンディッシュ研究所の初代所長となったジェームス・クラーク・マックスウェル(1831~1879)が1878年に「ヘンリー・キャベンディッシュ電気学論文集」を出版するまで公開されませんでした。
単位時間(1秒)あたりに発生するエネルギー(電力)P(単はW [ワット])は,先ほど述べた電流かける電圧です。式で表すと,
P = VI (54.2)
となります。これにオームの法則を適用すると,
P = RI2 (54.3)
となります。この式は,単位時間あたりに発生するエネルギーは抵抗かける電流の2乗ということを表しています。この電流によって発生する熱を「ジュール熱」といいます。この関係は水に入れた導線にボルタ電池によって電流をながした時の温度上昇を測ることによって,ジュールが発見したものです。1840年に発表されました。
電流が流れるとオレンジ色に光ります。電流が流れることによって,エネルギーが熱に変わって温度が高くなったからです。物体の温度が高くなると黒体放射といって,光を発します(コラム95)。日本では製造中止になりましたが,白熱電球は,このように電流を流すと温度が高くなることを利用したものです。オーブントースターも同様に電熱線でものを加熱するものです(実験32)。
送電線でも発熱がおきます。(54.3)式に示すように発熱の量は抵抗かける電流の2乗になります。このため,同じ電力を送るためには電流が小さい方がよいのです。そのためには,電圧を上げて遠いところに電気を送ります。これが高圧線(送電線)です。
私の子が小学生のときに,バザーで家内がプラ板をしたことがあります。プラ板をするのに,ホットプレートまたはオープントースターを用いるのですが,「許容電流が何アンペアか?」を担当の先生に聞いてもわかりませんでした。そこで,私が前日に準備を手伝ったときに,ブレーカーを見せてもらい,許容電流が初めてわかりました。その時,許容電流が足りないので,体育館から電線ドラムで引っ張ってきました。