電気パンの実験(実験33)では,多くの場合ステンレスを用います。ステンレスは,正式にはステンレススチールととい錆び(Stail)ない(-less)鉄(steel)という意味です。鉄にクロムやニッケルが入った合金です。これらが溶け出して健康上問題になることが懸念されています。(松岡守・岩瀬仁志・手嶋由和・早川ひとみ・脇田圭造・尾本保明・川口博之・平山雄一・松村和俊・宮間敬・川口元一:日本産業技術教育学会誌,第43巻,第3号,pp.161-168 (2001))。金属のクロムあるいは,3価のクロムは人体に無害です。むしろ3価のクロムは人体の必須栄養素です。同じクロムでも,6価のクロムは毒性を持ちます。昭和48(1973)年に化学工場跡地の土壌での六価クロム汚染が問題になりました。ある程度の年配の方はニュースで聞いて,クロムというと毒性があるものだと思われるかもしれません。ニッケルについては,発がん性や金属アレルギーなどについて懸念がありますが,微量ならば問題がないといえます。児童は,電気パンをつくると必ず食べたがります。いろいろ心配する人がいるかと思いますので,心配と思うならば食べさせないか,電極の近くを除いて食べさせたらどうでしょうか。ちなみに,電極材料として銅,真鍮,ブリキ,ジュラルミンなどは毒性物質が溶け出し,食中毒になるので絶対使用しないでください。