ガラスについて説明することにしましょう。物体には気体,液体,固体があるといいました。固体の多くは,原子が規則正しく並んだ結晶状態にあります。ちょうど特急の指定席に人が並んだことになぞらえることができます(図155.1)。液体は,自由に動くことができます。ちょうど駅での人の流れがこれに相当します。ガラスというのは,液体が結晶になるまもなく固まった状態です。ちょうど満員電車に無理やり押し込められた乗客のような状態です。私は,福井に来る前に,東京で会社勤めをしました。常磐線で通勤していましたが,ものすごく混んでいて,倒れそうになっても,斜めの状態で次の駅まで行くような混み方でした。
ガラスの状態を図で説明しましょう。先ほどの相図は,横軸温度で,縦軸圧力でしたが,今度は縦軸が体積の相図で考えてみます(図155.2)。圧力は一定(大気圧)です。液体を冷却していきますと,体積が収縮します。それが,融点と呼ばれる温度になると,結晶に変わります。さらに温度をさげると,体積が縮んでいきます。液体をものすごく速く冷却すると,融点で固体にならず,液体のまま縮みます。この状態を過冷却液体といいます(実験95)。ところが,ある程度冷えると,固まって固体になります。でも,急に冷やしたため,結晶の状態に分子が並び変える時間がありません。そのため,バラバラなまま固体になります。このような状態をガラス状態といいます。普通のガラスやプラスチックなどの高分子物質は,比較的ゆっくり冷やしてもガラス状態になりやすいのです。ビニールボールを液体窒素で系脚してから樹脂製のハンマーで叩くとガラスのように割れます(実験83)。ビニールボールを液体窒素で冷やした状態は,この意味でまさに「ガラス状態」なのです。
関連動画: 「ガラスって何だろう?」(4分49秒)
関連サイト: 「第14回 さまざまな物質の科学2」