位置エネルギー(ポテンシャルエネルギー)と運動エネルギーの関係を考えるには,ジェットコースターを考えるとわかりやすいと思います。ジェットコースターは高いところにあるときには,より大きな位置エネルギーを持っています。それが低い所に落ちていくとスピード(速さ)が増して,運動エネルギーに変わります。低いところから,高いところに上がることができるのは,運動エネルギーが位置エネルギーに変わるからです。
ジェットコースターでは,高さhのところにある時には,位置エネルギーは高さと質量の積に比例した値を持ちます(式で書くとmghとなります。mはジェットコースターの質量,hは高さです。gは重力加速度と呼ばれる定数です)。ジェットコースターが下に降りてくると,速さが増します。速さを持っているものもエネルギーを持っています。速く動く「勢い」で,坂を駆け上ることができるからです。この「勢い」はエネルギーの一種で「運動エネルギー」といいます。運動エネルギーは質量と速さの二乗に比例します(式で表すと(1/2)mv2となります。ここで,vはジェットコースターの速さです)。この関係を図16.1に示しました。
力学的エネルギー保存則は,力学の基本法則であるニュートンの運動方程式から数学的に導くことができます。
ちなみに「エネルギー」という言葉は, 1807年にヤング(Thomas Young, 1773~1829)が著書の中で述べたのが最初です。「エネルギー」の語源はギリシャ語のἐνέργειαです。これは,ἐνεργός(energos)に由来します。「仕事」を意味するἔργονの前に前置詞ἐνをつけたものです。仕事をする能力を意味する言葉なのです。運動エネルギー(kinetic energy)は1850年頃にウィリアム・トムソン(William Thomson, 1824~1907)によって,位置エネルギー(potential energy)は1853年ウィリアム・ランキン(William John Macquorn Rankine, 1820~1872)によって定義されました。これらの言葉が定義されたのは,熱力学第一法則の確立期になってからなのです。
関連動画: 「力学的エネルギー」(2分50秒)
関連サイト: 「第2回 熱と仕事とエネルギー」