それでは,なぜ斜めに入った光が折れ曲がるのでしょうか。第2章(原文のママ)で,何の断わりもなしに光の波長だとか,振動数だとかいった言葉を用いてきました。波長とか振動数というのは波の性質を示す量です。光の波がどのようなものかは, 3.6節(引用元の文献そのママ)で詳しく述べることにして,ここではとりあえず池の表面に立ったさざ波のようなものと考えておいて下さい。まっすぐに進む光は,図84.4のように波の山の部分(波面と呼びます)が平行に進みます。
図84.5のように空気中から,ガラスの中に入るとガラス中では波面が空気中に比べてゆっくり進むために波面の間隔が短くなります。ガラス中での波面の間隔 (波長) は空気中の波長の1/n倍となっています。光がガラスの表面に垂直に入った場合は,ガラスの中と外で光の波長が変わるだけですから,そのまままっすぐ進みます。ところが,ガラスの表面に斜めに入射した場合は,そのまま進もうとしても,波面の間隔が変わりますので,まっすぐ進もうとするとつながらなくなります。ガラスと空気の境目で波面が切れることは決してありません。そこで,波面がつながるためには,ガラスの表面で光の進む方向が折れ曲がります。ただし,全ての光がガラスの中に入っていくわけではありません。一部の光はガラス表面で反射されます(図84.6)。
窓ガラスに映った自分の顔を見たことがあるでしょう。特にガラスの向こう側が黒いときはよく写ります。このときは,ガラスの向こう側から入ってくる光の強きが反射した光の強さに比べて弱いので反射した像が良く見えるのです。
いままで,空気中からガラスの中に光が進む場合を考えてきました。今度は,逆にガラスの中から空気中に光が出る場合はどうでしょうか。まず,ガラスの表面に光が垂直に進む場合を考えてみましょう。この場合は光はまっすぐ進みます。ただ,波面の間隔がガラス中と空気中で異なるだけです。このとき,反射率はガラス中から空気中に入っていく場合と,逆に空気中からガラスに入る場合と同じです (図84.7)。