屈折率の別の意味とは,図 84.1に示した関係よりももっと単純なものです。光は 真空中で1秒間に30万 km (3×108 m)も進みます。これは 1秒間に地球の赤道表面を 7周半回る速さに相当します。
光が,透明な物質の中を進むときの速さはこれよりも遅くなります。この光の速さが物質中で遅くなる程度を表す量が屈折率です。屈折率は一般にnで表します。屈折率がnである物質の中では,光は真空中のn分の lの速さで進みます。例えば,屈折率が1.5のガラス中では光が 1秒間に進む距離は,30万 km÷1.5 = 20万kmです (図84.2)。大気中での光の進む速さは,ほほ真空中での速さと同じで,空気の屈折率はほぼ1です (1気圧のとき 1.0003)。したがって,今後真空に対する屈折率と空気に対する屈折率は同じものとして話を進めることにします。
透明な物質の中で光の速さが空気中に比べて遅くなるのは,光が物質を構成している粒子との間で互いにカを及ぼし合う (相互作用する) からです。光が物質中を進むのと空気中を進むのは,ちょうどプールの水の中を歩くのとプールサイドを歩く時の関係にも似ています (図84.3)。すなわち,光は物質からある種の抵抗を受けるのです。どのような作用を受けるのかは 3.6節(原文のママ)でもう少し詳しく述べます。