先占の要件
先占の要件としては、3要件、または4要件など、それぞれの筆者の見解によって異なるが、その違いは、通告の有無の差にある。
現在図書館が近くにある環境ではないので、Googleで”先占の要件”を検索して出てきたものを上げてみる。
講義国際法p230
先占
領域主権が及ばない地域は無主地とみなされる。無主地の領有を意志を持って実効的に支配する国家が、その無主地を自己の領域として獲得できる。つまり、領域取得の意志と、その意思の存在を立証するための国家活動ー実効支配ーの二つが無主値の領有のための要件とされる。これが、17聖域以降、スペインやポルトガルに遅れて植民地獲得競争に乗り出したオランダやイングランドやフランスなどによって、「発見」の原則に代えて主張された(無主地)先占の権原である。
無主地とは、ある程度の社会的・政治的組織を具えた先住民が居住しても、いまだ西欧文明に類する段階(文明国)に達していない地域をもさすとみなされていた。この考え方が適用された典型的なケースがオーストラリア大陸である。1901年に制定されたオーストラリア憲法は、先住民アボリジニの存在を否定し、オーストラリアの地を無主地とみなした。もっとも、1975年の西サハラ事件についての国際司法裁判所の勧告的意見(百選15>は、先住民だけが居住する地域であっても、そこに固有の背社会的・政治的組織があり、住民を代表する権原を持つ首長の支配かに置かれているものは無主地ではないという国家観光が、19世紀末にはみられると判断した。
どの程度の実効的支配が必要であるかについては、当初は土地の使用や定住や植民といったような行為と解されていたが、その後19世紀後半頃からは、地方的支配権の確立を意味するように変化していった。さらに、どの程度の実効的支配が必要であるかは、無主地の状況にもよる。無人またはほとんど住民がいない地域については、実効性基準を柔軟に解釈することが判例上認められている(パルマス島事件<百選31>、クリッパートン島事件<百選34>、東部グリーンランド事件<百選33>など。)
■「世界の領土・境界紛争と国際裁判」 外交交渉と司法的解決の採用を目指して
金子利喜男 明石書店
http://akebonokikaku.hp.infoseek.co.jp/page042.html
先占の要件 つぎが、先占の要件とみられており、これについて、根本的な反対説はない。
第1に、それは国家によっておこなわれなければならないということ。その意志を表示しなければならない。
第2に、先占される土地は、無主の地であること。ある土地に人がすんでいても、その土地が、どの国家にも属して
いないときは、無主の土地とみられてきたが、しかし、そのような土地は、民族自決権と先住権の要求の高揚げとと
もに、古典的な理論に服しなくなった。
第3に、先占が実効的であることが必要である。先占を尊重させる権力が必要である。無人島の場合、ときどきみま
わって国家機関が秩序を維持できれば、それで十分である。
国際法の父といわれるグロチウス(1583―1645年)藻、「意志行為だけでは不十分であって、先占が明らかに認め
られ得る外部的行為がなければならない」(1)と述べている(田だし、これは海の先占について)。19世紀の後半に
は、先占が実効的でならなければならないことは確立したとみられている。
■グロティウス「戦争と平和の法」ーー内容目次:その2 ~"De iure belli ac pacis" de Grotius 2~
第4章 推定的放棄およびこれに続く先占について、ならびにこれが使用取得および時効取得との相違について
1 本来いうところの使用取得と時効取得とが、相異なる人民或はその支配者の間に生じない理由、2これらのものの間においても、長期の占有が常に主張されるこ と、3問題は人間意思の推定に従って決定される、而してこれらの推定は単に言葉のみに基かない、4かかる推定は行為に基いても行われる、5また不作為に基 いても行われる、6権利の放棄の推定のためには、非占有および沈黙の時期はいかほどの長さが必要か、7通常は、かかる推定のためには、記憶され得ぬ「時」 で充分であること、ならびにその「時」がいかなるものかについて、8何人もその権利を放棄したと推定されるべきでないとの反対論の解決、9かかる推定がな くとも、万民法上、所有権は、記憶の限度を越えたる占有によって移転するようである、10胎児も権利をこのように失わしめ得るか、11たとい主権でも、人 民または王により、長期占有によって取得されること、12使用取得および時効取得に関する国民法規は、主権を有するものを拘束するか、その説明および区 別、13最高支配権に属する権利で、それから分離され、或は他のものと分割され得るものは、使用取得或は時効取得によって取得され、或は喪失される、14 常に従属者が自由を要求することが許されるとの意見の排斥、15単に能力のみに属する権利は、時の経過によっては失われないこと、ならびにその説明
■竹島領有権問題に関する隠岐の島町見解
http://www.town.okinoshima.shimane.jp/takeshima/kenkai.html
「先占の4要件」
①国家が主体であること
②客体が国際法上の無主地であること
③国家の領有意思の表明があること(主観的要件)
④実効的占有実態があること(客観的要件)
■植民地法制の形成―序説―石村 修(専修大学法科大学院・教授)
http://www.law.ntu.edu.tw/east-asia2006/EA-Home/PD/%E6%97%A5%E6%9C%AC/2006032608.pdf
昭和11年発刊の岩波法律辞典によれば、国際法上の先占とは、「国家が従来如何なる国家にも所属しなかった地域に対して新たに自己の領域高権の発動・行使を認められ、其の地域を自国領域の一部たらしめることを得る行為である。」とし、先占の条件として、「
①先占の客体たる地域の権利者なきこと、
②先占を行ふ正当の権限ある者に依り国家の名によって行わること、
③先占の実効あることを要する、
④先占の通告
」、があり、この条件を全てクリヤーしたその効果として「先占の客体となった地域は其の時以後、先占国の領域の一部を構成し其の主権の完全なる支配の下に立つに至る」。こうした解説はかなり勝手な論理を構成するものであるが、この内容は1885年のアフリカを対象とした「コンゴー一般議定書」に示された内容でもあるので、当時の一般的な国際法の内容であったことが想定される
■尖閣諸島の領有をめぐる論点―日中両国の見解を中心に―国立国会図書館 ISSUE BRIEF NUMBER 565(2007. 2.28.)
(濱はま川かわ 今日子きょうこ) 調査と情報第565号
http://www.ndl.go.jp/jp/data/publication/issue/0565.pdf
先占の理論
先占とは、国家が、無主地、すなわちいずれの国家領域にも属していない地域を、領有意思をもって実効的に占有することをいう。
領有の意思は通常、当該地域を自国領土に編入することの宣言や、
他国への通告によって表示される。
しかし、通説によれば、
宣言や通告は、領有意思を示すための絶対的な要件ではない。
具体的な国家活動や関連事実から、その意思が推定されるからである4。(4*杉原高嶺ほか『現代国際法講義第3版』有斐閣, 2003, p. p.106.)
実効的な占有とは、言い換えれば、領有の意思の存在を立証する具体的な国家活動である。今日では、土地の現実的使用や定住といった物理的占有までは必要とされず、支配権の確立という社会的占有で足りるとされている5。
■安全保障第108号(盛夏号) 尖閣諸島を第二の竹島にするな―実効支配のための諸施策の提言
(財)日本国防協会調査研究委員 理事 森 惇
http://www.kokubou.jp/books-108-4.html
1)先占による領土編入
国際法は「先占」と呼ばれる行為による領有権を認め、その要件として
①その地域が無主であること
②国家がその地域を自国領土とする旨を明示すること
③その地域に有効な支配を及ぼすこと
の3点を挙げている。
■法政大学国際法研究会 (2005)
A.先占
無主地に対して領域主権を主張すること。これには以下の要件が必要である。
1.対象が無主地(いずれの国の領域でない)
2.その地域を領有する意思
3.平穏かつ実効的な占有を保持
→利害関係国からの抗議がないこと
ex)クリッパートン島事件
■外交官試験のすべて
http://tokyo.cool.ne.jp/ysdiplomat/il17.htm
(2)先占
(a)定義 無主地に対して領域主権を主張すること
(b)要件 1.対象が無主地(いずれの国の領域でない)
2.その地域を領有する意思
3.平穏かつ実効的な占有を保持
↓
1.→民族自決権思想の影響により範囲が限定される方向
3.→利害関係国からの抗議がないことが重要
→占有の実効性は、占有の難易によって程度が異なる
これらを勘案すると、先占の要件としては、
3要件、または4要件どちらかを記載しているのだが、その違いは、通告の有無の差にある。
これについて、以下のように述べている。
大壽堂鼎 第三章 竹島紛争 322 (猛の竹島掲示板控帳)
また、外国政府に対する通告を先占の要件とするのは少数説にすぎない。なるほど、一八八五年のベルリソ会議一般議定書は、先占の要件として、地 方的権力の確立のほかに、通缶をも義務的とした。しかし、ベルリン議定書の効力は地域的にアフリカ大陸の海岸に限定されており、同議定書を廃棄した一九一九年のサン・ジェルマン条約は、地方的権力を維持する義務を確認したが、通告の義務は除外している。国家実行を見ても、通告は例外約にしか行たわれていな い。*16
判例や学説の多数も、通告の必要を認めていないのであり、*17
これが一般慣習法上の義務として存在するとはいえないのである。もっとも、通告が国家の領有意思を明確にするため、望ましいとはいえる。小笠 原島の領土編入の場合には、この旨が東京駐在の各国公使に通告された。しかし、これは当時、アメリカやイギリスが小笠原島の帰属間題に関心をもっていたか らなされたのであり、*18
竹島のように、編入当時どこの国も関心を示さなかった無人島の場合には、政策的な見地からしても、通告が必要だと断定できない。さらに、秘密裡になされたという非難は全く事実に反しており、当時新聞にも報道された
時効
国際法上時効制度が存在するかは非常に議論のある問題である。時効は大きく分けて取得時効と消滅時効がある。領域権限論の中で議論される時効は、取得時効である。その取得時効はさらに、「超記憶的占有」として主張される場合と、ローマ法上の「使用権限(usucapin)]の類推として主張される場合があった。前者は、自国の領域が固有のものとして、古来ー記憶を超える時代からー存在するということを意味した。これに対して後者は、一般に法律で時効期間を定め、その期間の経過により取得時効としてその地域を取得できる制度としてとらえられていた。しかしながら、国際法においては国内法の場合と異なり、時効期間の定めがなく、取得時効の効かは、時間の経過と云うよりは、他社による黙認に基づくと解される。そうであるとすれば、「取得時効」という名称は必ずしも妥当とはいえないかもしれない。なお、国際司法裁判所は、1999年のカシキリ・セドゥドゥ島事件判決(ボツワナ対ナミビア)(ICJ Reports 1999 p 1045)において、両当事国が認める取得時効の4要件(主権の行使、平和的で中断のない占有、公の占有、一定期間持続した占領)が当該事件において存在するかを検討する権限を裁判所が有することを認めたうえで、当該事件では、ナミビアはそうした事件を満たしていないと判示している。
(講義国際法 有斐閣 小寺彰 岩沢雄司 森田章夫 編 2004 P232L2~L18)
ペーパープロテスト
マンキエ・エクレオ事件において、カルネイロ裁判官は、
「イギリス政府が行動し、主権を行使し続けた一方で、 フランス政府はペーパープロテストをすることで満足した。
他には何もできなかったのであろうか。仲裁裁判を提案することができたし、するべきであった」
「そうした提案をしなかったことは、自己の請求を無効にしてしまわないまでも、 請求の効力を奪うものである」
と補足意見(国際司法裁判所判決集1953年、107~108ページ)