「来年、仙台に商大試験場を設置するので会場選定などで協力してほしい。」
2018年3月、小樽での卒業祝賀会の席で、和田学長からお声がかかった。これまで青森に試験場を設けていたが、道外出身者を長期的に募るため、東北の中枢都市・仙台に試験場を設けることを決定したとのことだった。
江頭副学長からも「会場は仙台駅前。貸会議室よりも、学校施設が利用できれば」とのリクエストがあった。
仙台に試験場を設けている大学は、国公立大学や首都圏の有力私大など相当数ある。かねてより仙台緑丘会(以下、当会)は、都市機能や交通条件から仙台試験場を提案していたこともあり、私はその場で協力を快諾。ここに仙台試験場プロジェクトがスタートした。
まずは会場探しである。最初に東北学院大学に高橋志朗教授(昭50卒)を通じて打診したが、既に北海道教育大学の先約が入っていた。調べると、道教大は、宮城・岩手・山形からの進学者が毎年一定数いる。きっと仙台試験場の効果だろう。先を越されたと思う反面、商大にも十分に可能性があると期待を抱いた。
公立の高崎経済大学は、40年前から試験場を設置していた。仙台・山形の金融機関には同大学出身者が多く、聞くと彼らは、仙台試験場で受験している。卒業後は東北で就職し、職場や地区の同窓会活動も活発だ。この「好循環」は、商大が目指す一つの姿であると考えた。
試験会場選びにあたっては、当会が、市内の候補先を選定し商大入試室に提示した。最終的に、当会幹事がお付合いのある学校法人北杜学園に相談し、同校の仙台駅前校舎が立地条件、施設面、賃借条件のすべてをクリアできたことから、ここに仙台試験場が誕生する運びとなった。
小樽商科大学仙台試験場(学校法人北杜学園 仙台医療福祉専門学校 仙台市青葉区中央)
仙台試験場の決定にあたり、現地を視察する商大教職員の皆さん
次は受験生集めである。残念ながら、仙台では、年配の社長は小樽高商の名声を知っているが、いまの高校生には商大の知名度は余り高くないと思われた。
よってまず最初に商大受験実績のある高校をピックアップ。さらに当会では、東北六県の進学高校を対象に、国公立大学合格実績を全調査した。商大入試室は、このデータも参考にして、ターゲット先の高校に、仙台試験場の宣伝資料を一斉に郵送した。
次のステップとして当会は、鈴木副学長の高校訪問に同行。商大進学実績のある仙台市内の高校を中心に現場に足を運んだ。
「各大学から訪問がありますが、同窓会の方が一緒来校されたのは初めてです」。高校の先生は、緑丘会の結束力に驚かれた。これもアピール材料である。
やはり商大進学実績のある高校は、先生の印象や理解も良い。生徒に商大を勧めてくれている。いまの高校の進路指導は、生徒に早い段階から明確な将来目標を持たせて「現役合格」が大前提。かつては生徒のヤル気任せだった公立進学高校でも、きめ細やかな受験指導を徹底している。それだけに商大進学実績のある高校を大切にし、学校訪問で先生との信頼関係を築くことが最優先と感じた。
このほかに初年度は、夏から冬にかけて、毎月のように仙台試験場開設に向けたプロジェクトが数々あった。
大学合同進学相談会、藤崎百貨店「小樽の物産と観光展」、ミヤギテレビの情報番組などで、商大と仙台試験場を宣伝する機会もあった。そのたびに商大教職員と一緒に行動し、夜は仙台の街で懇親会を重ねることができた。
そのおかげで当会は、文科省の大学政策、商大の課題と方針、大学統合など多くの知見を得ることができた。そして、仙台試験場の長期運営に向けて、商大教職員との信頼・協力関係も深めていった。これらの同窓会としてのサポートには及第点はもらえただろうと自負している。
最終的に最初の19年の仙台試験場の志願者は19名であった。
宮城県のトップ進学校・仙台二華高等学校を訪問(鈴木副学長、仙台緑丘会小笠原事務局長)
ミヤギテレビ情報番組「OHバンです」にミス小樽と商大くんが出演
2年目は、商大の知名度と存在感を高めることを目標にした。
まずは江頭副学長が中心となり、公開セミナー「ソーシャルサンエンスカフェ仙台」を3回にわたり開催。商大は、将来の北海道新幹線の札幌延伸を見据え、北海道・東北を観光政策、地域ブランド化、防災対策等で結び付けていくことを仙台市民にアピールした。この様子は河北新報・日本経済新聞・北海道新聞の取材も受けた。
併せて鈴木副学長との高校訪問も継続した。2年目になると進路指導の先生の反応も良くなった。自分の高校の指導方針や商大に期待することなど具体的な話題が出るようになったのである。
そして秋口には、仙台の高校生の両親から当会に一通のメールが届いた。
進学校に通う娘さんは、商大が第一志望。夏休みに小樽のオープンキャンパスにも参加した。でも情報が少なく、親としては北海道に進学させることが不安である。仙台緑丘会ホームページを見つけたので、相談に乗ってほしいとの依頼だった。
思いがけない申し出である。急きょ当会事務局で、片倉まゆさん(平29年卒)が、ご両親と面談。小樽での学生生活を紹介し、ぜひ商大へ進学させてほしいと伝えた。ご両親は、すっかり安心された表情だった。緑丘会の強い結束力にも感心され、娘さんの希望どおり受験させたいと語ってくれた。
また、秋の大学合同進学相談会では、商大志望の仙台・盛岡のトップ進学校の女子生徒さんたちにも出会い、二年目の確かな手応えを感じることができた。
この手応えは、嬉しいことに志願者数の増加となって表れた。20年は前年を上回る25名の実績を残すことができたのである。
2次試験後の商大教職員との反省会で、21年の目標を志願者50名とした。新たな対策として商大教員による高校での模擬授業も考えている。商大の魅力に直接触れることで、東北の志願者が増えることを期待したい。
本稿を緑丘会本部へ送付したのは、仙台試験場での2次試験終了後の2020年3月上旬、新型コロナウィルスの感染拡大が世界各地で懸念され始めた時期であった。
その後あっという間に全国に感染が拡大し、卒業式や入学式が相次いで中止となった。母校・小樽商大も例外ではない。学生は緑丘キャンパスに通えず、講義はオンラインでの対応。今春、仙台や東北各地から商大に進学した若き後輩たちは言葉にできないやるせなさを抱いていることだろう。
6月になって商大から本年度の入試実施要項が発表された。仙台試験場は予定どおり2021年2月も継続設置となった。だが、いまだウィルス感染の収束が見通せない状況にあって、当会は本年予定していた高校訪問等のサポートが実施できないまま、今日まで時が過ぎている。
昨年出会った商大志願の高校生たちは、いま、どうしてるだろうか。この厳しい環境でも受験準備を進め、商大を目指してくれているだろうか。
当会としては、一刻も早くコロナ禍が収束すること。そして、来年も仙台試験場に東北一円から多くの高校生が集い、商大を志願してくれることを祈るばかりである。
2020年8月25日 仙台緑丘会副会長 尾形 毅(平元年卒)
仙台市民に小樽商科大学をアピール、市民向け公開講座を開催
合同大学進学相談会、小樽商科大を志望する仙台・盛岡の高校生と商大教職員が面談