小樽商大仙台試験場・高校訪問記2024


仙台緑丘会は2024年9月17日(火)~18日(水)、今年も商大仙台試験場の受験生発掘のため、片桐副学長に同行し、仙台市を中心に主要高校に訪問しました。 

片桐副学長は宮城県内での高校訪問は初めてとなります。このため当会の及川副会長と小笠原事務局長が、これまでの高校訪問で得られた知見をとりまとめ、事前に商大入試室と共有するなど引継ぎをサポートしました。

今回の訪問では来春、学校推薦で商大を受験する生徒さんがいることも確認できました。受験者がさらに増加することを願ってります。


1.小樽商大への関心と理解

 小樽商大のセールスポイントと高校の認識

 宮城県の進学高校では国公立大学志向は依然として強く、各校の進路指導教諭は、成績に応じた現実的な進路指導を行っている。東北大学や山形大学、関東圏大学への関心はあるが、北海道の大学への関心は全般的に高くない。また、地元志向が強く、東北学院大学を希望する生徒・親御さんが非常に多ことにも配慮が行われている。

これまでの商大副学長と仙台緑丘会との高校訪問によって、進路指導教諭には小樽商大の認知度が徐々に高まって来ている。商大が就職に有利な大学であること、英語の教員免許が取れること、実用的な英語に重点がおかれていること、留学制度が充実していることなどを高く評価されている。

一方で、全国の旧官立高商で小樽だけが単科大学に昇格し存続していること、学年募集が500人で経済系学部では最大であること、商科大学で商業・英語・情報の教員免許が取れることは知られておらず驚かれる。ギャップイヤー制度には関心を持たれるが、受験意欲に結び付くほどの魅力や必要性は感じられていない。

最近は「情報」の教員免許が取れることへの関心が高い。2022年度から高校「情報Ⅰ」が全員履修となり、2025年度から大学入試共通テストや一部国公立大で出題されるため、ある高校では美術の先生が「情報」を担当するなど、各校とも「情報」の授業が出来る先生が不足していることが背景である。

当会のように、仙台在住の卒業生が大学関係者との高校訪問する点は、他大学には見られず、同窓会の強さ=就職の良さを感じて頂ける点と思う。


生徒に商大を理解してもらうために

仙台緑丘会会員の地元の出身高校では、仙台第一高校(旧制一中)、仙台第二高校(旧制二中)、古川高校(旧制三中)、東北学院高校などバンカラ系男子高校が主流であったが、共学化以降は様変わりしている。

現在の状況としては、生徒間での小樽商大の知名度はまだまだ低い。二次試験科目数が旧帝国大学と同様であり、表面上の偏差値だけでは分からない商大入試の難しさもある。北海道や札幌の高校と違って、商大入試対策を学校で行うこともないので、宮城から商大志願する場合の情報提供はさらに必要である。

高校訪問は、いまや国公立私立を問わず、他の大学でも盛んに実施されている。高校の廊下や掲示板には大学のポスターや募集要項が張り出され、進路指導室には十分なパンフレットや資料がある。商大のポスターやパンフレット(30部程度)を置いて頂き、生徒が自由に見てもらえるようにしたい。

生徒と直接話をするのが効果的だが、学校側は現役の商大生や出前講座等以外は接触させない。現役の商大生を母校に派遣することも検討価値がある。また、出前講座には各校とも関心があり、この点で交渉をしてみるのも良いかと思う。

狙い目は、スーパーサイエンスハイスクール指定の仙台第一高校、仙台第三高校、宮城第一高校、国際バカロレア指定校の仙台二華高校、商大に関心の高い泉館山高校、仙台向山高校、仙台南高校、聖ウルスラ学園英智高校あたりではないか。


2.今回訪問した高校

【1日目:9月17日】

 ・県立高校 古川高校、泉高校、泉館山高校、仙台第三高校、仙台東高校

 ・市立高校 仙台市立仙台商業高校

 ・私立高校 東北学院榴ヶ岡高校

【2日目:9月18日】

 ・県立高校 名取北高校、仙台南高校、仙台向山高校、宮城第一高校、仙台第一高校、仙台二華高校

 ・私立高校 聖ウルスラ学院英智高校

  ※宮城県の県立高校は、「宮城県立」ではなく、宮城県古川高校、宮城県仙台第一高校等と称してる。


3. 宮城県内高校の歴史と変遷

旧制中学・高等女学校を起源とする男女別学校

宮城県の高校(旧制中学)の歴史は、1892年(明治25年)の宮城県尋常中学校から始まる。戦前の旧制中学、高等女学校に起源をもつ県内主要高校は、戦後の学制改革後、すべて男女別学として発足した。その後、平成に入り共学化が進められ現在に至っている。

 ・宮城県尋常中学→宮城県第一中学→仙台第一中学→ 宮城県仙台第一高校

 ・宮城県第二中学→仙台第二中学→ 宮城県仙台第二高校

 ・尋常中学志田郡分校→宮城県第三中学 → 宮城県古川中学 → 宮城県古川高校

 ・仙台市高等女学校→県立宮城県高等女学校 → 宮城県第一女子高校 → 宮城県宮城第一高校

 ・私立東華女学校→私立東華高等女学校→宮城県第二高等女学校 → 宮城県第二女子高校 → 宮城県仙台二華高校

 ・宮城県第三高等女学校 →宮城県第三女子高校 → 宮城県仙台三桜高校

 ・県立ナンバースクールとしては、戦後1963年(昭和38年)に、宮城県仙台第三高校が男子校として新設された。

【参考】 日本経済新聞:2024年9月4日

「戦後間もないころ、新制高校の制度づくりをめぐってあちらこちらに旋風が吹き荒れた。民主化を強く求めたGHQ教育担当官がとりわけ熱を入れたのは、男女共学への 転換であった。戦前からの旧制中学や高等女学校は別学はまかりならぬ。しかし担当官の意気込みには濃淡があり、お達しは東日本ではゆるかったという。そのため北関東や東北には別学の県立高校がたくさんあった。現在でも埼玉、群馬、栃木の3県には計32校ある。別学の公立高校は1960年代には全国に300校以上あった。しかし、もはや42校を数えるだけだ。近年は私立高でも共学化が相次ぐ。」


新設された共学高校

1975年(昭和50年)設立の宮城県向山高校以降は、仙台南高校、仙台東高校、仙台西高校、宮城野高校、仙台広瀬高校、仙台市立青陵中等校等、全ての新設の公立高校は共学となった。仙台市の北にあった旧泉市にも1973年(昭和48年)に共学の宮城県泉高校が設立、その後、泉松陵高校、泉館山高校と共学の新設が続いた。

その他市内には国立高専・公立高校として、国立電波高専、国立宮城高専、宮城県工業高校、宮城県農業高校、仙台市立では仙台高校、仙台工業高校、仙台商業高校、仙台女子商業高校(現在は仙台商業高校と合併)があり、工業系は基本共学だが以前は女子の入学者は限られていた。


仙台市内の私立高校

私立男子高校は、東北学院中高校、東北学院榴ヶ岡高校、東北電子高校(現城南高校)、栴檀学園高校(廃止)、仙台育英学園高校、南光学園東北高校であり、その後、全てが共学となった。

私立女子校は、宮城学院中高校、仙台白百合学園中高校、尚絅女学院中高校、聖ウルスラ学院小中高校、聖ドミニコ学院中高校、常磐木学園高校、聖和学園高校、三島学園女子高校(現東北生活文化大高校)、朴沢学園高校(現仙台大学付属明成高校)がある。

尚絅女学院中高校は、2003年(平成15年)から共学になり、尚絅学院に改称した。最新では聖ドミニコ学院が2023年(令和5年)から共学となったが、宮城学院中高と仙台白百合学園中高、常磐木学園高校(音楽科を除く)は現在も女子校である。

仙台市内の私立高校では、難関大学や国公立大学への進学を目指す特別進学クラスを設置しているところも多い。進学に特化したカリキュラムを導入することで、高い進学実績を上げている高校もあり、大学進学ルートの多様化が進んだ。


県立高校の共学化

仙台第二高校出身の浅野史郎が宮城県知事になると、県立高校の共学化と宮城県の高校学区の南北二分割を実施した。県議会や教育界、北陵会(仙台二高同窓会)の反対を押し切って、2007年(平成19年)に仙台第二高校が共学となり、その後、県内各高校に波及し、2010年(平成22年)の仙台第一高校の共学化で完了する。

宮城県第一女子高校は宮城第一高校、宮城県第二女子高校は2009年(平成21年)に中高一貫校として仙台二華中高、宮城県第三女子高校は仙台三桜高校、仙台市立仙台女子商業高校は仙台商業高校と合併して共学の仙台商業高校となり泉区へ移転した。仙台女子商業校舎には仙台市立青陵中等教育校が設立された。

私立高校でも、生徒数減少に対応した共学化が進み、1995年(平成7年)の私立東北学院榴ヶ岡高校、2005年(平成17年)には聖ウルスラ学院英智小中高が共学となった。県立主要高校では50人×8クラスの1学年400人であったが、現在は40人×8クラスの320人、仙台市外では280人や240人である。


4.進学動向

国公立大学への進学動向 山形大学への進学

県立高校の普通科は概ね進学校であり、特に仙台第一高校、仙台第二高校、仙台第三高校、宮城第一高校、仙台二華高校は、旧来からの伝統もあり、東北大学をはじめとする難関大学へ高い進学実績を有している。

東北大学以外の国立大学では、山形大学の受験者・合格者が突出しているのが特徴であり、宮城県内の宮城教育大学や県立宮城大学よりも多い。このことは逆に山形県内の進学校から、山形大学へ進学する生徒数の減少を招いている。

山形大学の人気の理由の一つは、仙山圏の都市間高速バスが拡充し通勤通学が可能なことにある。宮城県庁前から仙台駅前を経由して、山形駅まで高速バスで1時間弱、料金片道1000円で、朝夕の運行本数は仙台地下鉄並みに多い。

特に山形大学小白川キャンパスは、高速バス停からほど近く便利性が高い。山形市内にアパートを借りるよりも仙台から通学した方が安価であり、仙台でバイト先も見つけられるなども理由である。こうした傾向は、仙台と山形の広域経済圏を背景とする県境を超えた地元志向といえる。

東北圏内では岩手大学と福島大学が続き、弘前大学(医)や秋田大学(工・金属)など特色のある専門分野を目指す傾向がある。全体として東北圏よりも、茨城大学、新潟大学、埼玉大学、宇都宮大学、千葉大学等の関東圏に流れる傾向が強く、北海道の大学にはなかなか目が向いていない。

公立高崎経済大学への受験者・進学者が多いが、これは昔から仙台試験場があり各高校からの入学実績があること、一次試験よりも二次試験の考課割合が高いことなどなどが要因である思われる。


地元重視の傾向 東北学院大学への進学

東北6県の高校生を対象にリクルート進学総研が調べた「志願したい大学ランキング」は、1位東北大学、2位東北学院大学、3位山形大学であった。以下、岩手大、弘前大、東北福祉大、福島大、宮城教育大、筑波大、新潟大。男子1位は東北大学、女子1位は東北学院大学である。

東北学院大学は、圧倒的な学生数と卒業生を背景に、地元企業や役所への就職者数が多く、例えばある地元金融機関では職員の6割が東北学院大学・高校出身者であるなど、「東北学院大学の独り勝ち状態」となっている。

訪問先の高校の進路指導担当によると、親元を離れて国公立や有名私大を頑張って受験しなくても、推薦枠で東北学院大学に入れば、宮城県内や政令指定都市・仙台では十分との思いが、親と生徒の双方にあるのではないかと語っている。こうした地元志向の強まりを踏まえた進路指導が各高校で行わている。


<片桐副学長との懇親会>

高校訪問の最終日、9月18日(水)夕方、片桐副学長と仙台緑丘会の懇親会をホテルメトロポリタン仙台イーストで開催、13名が出席しました。今回は、片桐ゼミ1期生の北島敬康さん(平成10年卒、サッカー部)も当会に初参加。この春、仙台に転勤着任されたばかりだそうです。これからぜひ当会行事にたくさんご参加いただき、緑丘交流を楽しんでください。