第51回 久野ゼミ蔵書整理顛末記

事務局

小樽商科大学名誉教授の久野光朗先生(会計学)のゼミナールでは、卒業生と在校生が「久野会」を結成し、隔年で会報誌「和光」を発行しておりました。昭和63年3月発行の会報第13号から、当時商大3年生だった仙台緑丘会員が書き記した「久野ゼミ蔵書顛末記」をご紹介します。

<久野ゼミ蔵書整理顛末記>

今一番頭を悩ませているのは久野ゼミ蔵書の整理分類である。

蔵書は、卒業生から寄贈されたもの、雑誌、パンフレット類に大別できる。卒業生の方々には毎年本を寄贈して頂いており、その数は相当なものである。『企業会計』『会計』等の雑誌も相変わらず定期購読を続けている。また『和光』のバックナンバー号やブロゼミのレジュメ等もかなりの量が保存されている。

久野先生にお伺いしたところ、ゼミ蔵書の中には希少価値が高く、商大図書館にさえない文献が数々あるとのこと。まさに久野ゼミの誇る財産である。だが不思議なことに、未だ巻末の会計報告で貸借対照表資産の部に計上されたことはない。

これらの蔵書は日常のゼミの勉強に使用されることはもちろんのこと、ブロゼミの準備にさいしては「知の宝庫」として、その威力を十二分に発揮する。

蔵書の中で『会計学事典』と『広辞苑』はその性質上通年で最も頻繁に利用されているようだ。特に久野先生による「抜き打ち漢字テスト」に合格すつには、『広辞苑』が必要不可欠である。この二つの蔵書は体裁よく収まっていたことがない。いつもゼミ卓の上にポンと放り出されている。辞書とはそんなものであろう。

現在ゼミ室にはスチール製の本棚が三つと木製のものが一つある。スチール製のうち二つには『企業会計』『会計』『産業経理』が収められている。もう一つの方には先輩方に頂いた会計学関連以外の文献が収められている。

木製五段の本棚はゼミ室に入るとすぐ右手に据え置かれている。この本棚は旧制小樽高等商業学校時代に購入されたものらしい。がっちりとしたその造りが時間の厚みを感じさせる。これは前後両面に収納できるため、前面には会計学関係の文献、後面には『和光』、「ブロゼミレジュメ」、そして『朝日ジャーナル』が保存されている。おそらくゼミ生全員が、この木製本棚を久野ゼミの代名詞のように位置づけ、愛着を感じていることであろう。

ただ年を経るごとに蔵書数が増大していくことは必定で、今やゼミ室に既存する四つの本棚だけでは、すべての蔵書を収納しきれなくなってきている。収納できないものはゼミ卓の上に無造作に山積されているのが現状である。そこで本年度の懸賞論文の賞金が入ったら、新しい本棚を購入し文献を整理しようという話が夏休み前に持ち上がった。(賞金が確定していないうちから、その使い途が決まってしまうのは久野ゼミの伝統のようである。) 。

ところがゼミ室をよく見回してみると、新しい本棚を購入したとしても、それを置くスペースが全く無いのである。われわれはハタと困ってしまい、ゼミ室自体のレイアウトを真剣に考えざるを得なくなってしまった。二つの黒板の機能を殺すことなく、本棚とゼミ卓をいかに配置するかが焦点であるが、妙案はなかなか浮かんでこない。

だがこのように蔵書整理に四苦八苦すること自体、他のゼミナールの面々からすれば羨むべきことなのであろう。久野ゼミと肩を並べるだけの蔵書を有するゼミナールを私は知らない。蔵書に著された先輩方の箴言の収録は既に『和光13号』で試みられているが、その箴言に接する度に深い感銘にとらえられ、時間を超えた久野ゼミに対する共通の思い入れを感ぜずにはいられない。ゼミ生は蔵書を手にすることで、いまだお会いしたこともない諸先輩方に思いを寄せ、同族意識といっていいような感情を抱くようである。新歓・追コンはもちろんのこと、この蔵書を媒介として養われる強いゼミへの愛着心こそが、久野ゼミの最大の特色であろう。小さな学園・小樽商科大学に内在する卒業生と在校生との強い同族意識の典型例が久野ゼミに見いだせるのである。

それ故蔵書は大切に保存し大いに活用しなければならない。この一年、伝統の恩恵を享受しながらも、時にはその重さに抵抗を感じ、全く奇抜・斬新なことも試みたりしてきた。それはそれでゼミ活動の活発化には必要不可欠なことであると考えている。この膨大な蔵書に囲まれながら、良き伝統を継承しい、さらに新しい風を自分達なりに吹き込んでいくこが、われわれゼミ生の課題であると信じている。