第01回 最上町から商大への「けもの道」

平成元年卒 尾形 毅

「けもの道」付近からの小樽の町と港を見下ろす

私は、小樽天狗山スキー場近くの最上町一丁目に下宿しており、商大までは歩いて20分ほどの距離でした。最上町から通う商大生や教官のみなさんは、第二大通を降りて地獄坂を登る道筋ではなく、 最上町から緑町住宅方面へ続く山道を一気に登り、商大研究棟の敷地へ続く「けもの道」と呼ばれる近道ルートを通っていました。

緑町住宅の小路を山の中腹まで登りきるとそこで道はおしまい。その先は生い茂る熊笹をかき分けながら足場のよくない山道(けもの道)を歩き、緑丘戦没者慰霊塔に近くに抜け出ました。 この「けもの道」は最上町から商大を結ぶ最短ルートであり、商大へ通う方々が長年にわたって山中を歩き、踏み固めて出来た商大専用の山道でした。

山道ですから雨の日や冬季間は「自主的通行止め」となります。1年生の冬には敢えて雪中行軍を挑みましたが、あやうく山中で遭難しかけたこともありました。

しかし、この難儀な「けもの道」からは、眼下に小樽の街並みと日本海が一面に広がり、港に出入 りするフェリーを立ち止まって眺めていることもあったほど、心に残る美しい眺めでした。

また、ある秋の日、例によって久野ゼミの議論が白熱し、あたりはすっかり日が暮れて夕闇につつ まれた時がありました。帰路を急いでいた私は、思い切って夜の「けもの道」を通って帰ることにしました。

昼間通いなれた「けもの道」とはいえ、明かり一つない夜の山中は全くの別世界でした。本当に何かが出てきそうな気配さえあり、「しまったな」と思いつつも引き返すこともできず、足元を確かめながらゆっくり闇の山中を進んでいきました。

ようやく「けもの道」を登り切ったとき、暗やみから出てきた私の目の前に、突然、まばゆいほど に光輝く小樽の夜景が現れました。普段見慣れているどこかゆったりとした昼間の町の表情とは別人の、実に華やかで艶やかな町の表情が眼下に広がり、あまりに予期せぬ出来事に私は足を止めてしまいました。

なぜかこの時「この光景は一生忘れてはいけない」と思い、帰路を急いでいたにもかかわらず、その場を立ち去りがたい気持ちが勝り、私は脳裏に一生懸命その輝く町の姿を焼き付けました。

昨年(平成22年)、私は久しぶりに小樽に帰り、最上町の下宿からこの「けもの道」を目指して歩きましたが、緑町住宅の建替えにともない既に道は無くなっていました。 そのかわりに新たに商大へつながる迂回ルートが整備され、立派なコンクリート階段も作られて「新・けもの道」へ昇格していました。