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哲学史講座⑧ 近代哲学の本流―唯物論と観念論

2012/12/10 15:46 に 山根岩男 が投稿   [ 2013/06/12 21:51 に更新しました ]
 「近代哲学の本流―唯物論と観念論」第8講

11月23日に第8講が開催されました。今回は近代哲学の本流である「イギリス唯物論」と「大陸の観念論」について学びました。

1. イギリス唯物論
ベーコンに始まるイギリス唯物論は、認識論においては経験論であり、それは同時に「社会にかんする哲学」(イギリス啓蒙思想)を生み出しました。啓蒙思想は唯物論的現実批判の側面と観念論的合理主義の側面を併せ持ち、それは啓蒙思想の柱となる自然法思想と社会契約論にも反映されていました。しかし啓蒙思想はフランス革命に結実し、「近代」という時代を開花させる理論的支柱となったのです。啓蒙思想の代表的理論家がホッブスとロックであり、共に社会契約論を打ち立てました。ロックは特に所有権を「天賦の人権」と捉えブルジョアジーの利益を代表する思想を展開しました。また認識論においては、デカルトの生得観念を否定し、人間の心を「タブラ・ラサ(白板)」と捉え経験に由来する認識論を発展させました。

2. 大陸の観念論

イギリス唯物論に対抗して発展してきたのが、デカルト、スピノザ、ライプニッツ、ヴォルフの「大陸の観念論」でした。講師は「これまで彼らは大陸の合理論とよばれてきたが、その本質からして『大陸の観念論』と呼ばれるべきもの」と強調。認識論としての合理論は、数学的手法による「論理的完全性」に真理の基準を求めましたが、それは結局形式論理学の同一律を基準とする方法であり、大陸の観念論は必然的に形而上学に結び付くことになりました。

また彼らは世界観の上では「世界図式論」の立場に立ち、「世界のできるまえからどこかに永遠の昔から存在している図式」(エンゲルス)により世界を体系化しようとする観念論にたちました。スピノザは「実体」-「属性」-「様態」という3つの根本概念から、世界のすべてを演繹的、体系的に構築する世界図式論を展開しました。彼はデカルトの神、物体、思惟という3実体論を批判し、世界の根本原因(自己原因)を神に置き、神を唯一実体としました。そして神の属性として延長(物体)をとらえることにより、万物のうちに神が存在するとの汎神論の立場に立ちました。
またアリストテレスにつぐ博学者と言われたライプニッツは、「モナド」という活動的なイデアを世界のすべての事物の実体と考え、そこから演繹的に世界図式論を展開しました。彼はスピノザの実体論では「唯一実体の神からいかに多様な事物が生じるのか」を十分に基礎付けできないと考え、多様な事物のうちに多様な実体(モナド)が存在すると考える事によりスピノザを乗り越えようとし、全世界は多数のモナドの総和から成り立っていると考えました。また彼は真理を「永遠の真理」(理性によって論理的に見いだされる数学的真理)と「事実の真理」(経験によってのみ知られ決して論理的に証明されえない真理)に区別し、「事実の真理」の認識原則は「充足理由律」(すべて存在しているものは十分な理由ないし根拠があって存在しているという原理)である事を明らかにし、形式論理学の公理を一歩発展させました。

3. 近代哲学の2つの流れ
 近代哲学はイギリス唯物論に始まり、それに対抗した「大陸の観念論」という対立する流れを生み出しました。「唯物論か観念論か」という問いが「哲学の最高の問題」(エンゲルス)として提起される源泉を今回の講座では学ぶ事ができました。この2つの対立する流れの展開の中で、「思考と存在との同一性」という今一つの哲学の根本問題の流れが今後の講座で論じられ、弁証法的唯物論という「近代哲学の到達点」に凝縮していく過程が、さらにダイナミックに展開されていくことになりそうです。私自身、想像するだけでワクワクします。


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