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哲学講座第6講 中世哲学1 スコラ哲学

2012/10/25 19:16 に 山根岩男 が投稿   [ 2013/06/12 21:53 に更新しました ]

  哲学講座「哲学史の総括としての科学的社会主義の哲学」第6講
スコラ哲学~イデオロギーとしての哲学の完成~                                                                       
                              宮中翔 (県労学協理事)

 今回は、中世全体を支配したスコラ哲学について学びました。

①封建社会を支えるイデオロギー
 中世は社会構成体としては、奴隷制社会から封建制社会への転換を成し遂げました。封建社会は、土地支配による封建領主と農奴の階級対立の社会であり、こうした支配を正当化するイデオロギーとして登場したのがスコラ哲学でした。ギリシア時代に誕生した「真理探求としての哲学」が、中世において支配正当化のための「イデオロギーとしての哲学」への転換を遂げ、哲学にも階級性、党派性がある事を歴史上初めて示しました。
 講義は、スコラ哲学全体を「生成期」、「最盛期」、「衰退期」の三時期に区分し、展開されました。それは主として「信と知の統一」、「神学と哲学の統一」を巡って様々な議論が展開された歴史でした。

②「生成期」のスコラ哲学
 アンセルムスは、信仰を知識によって裏付けようとし「神の存在論的証明」を試みました。「もっとも偉大なものは、知のうちに存在するだけでなく、事物のうちにも存在しなければならない。よってもっとも偉大なものとしての神は存在する」
 ヘーゲルはこの存在論的証明の中から「概念(真にあるべき姿)と存在の統一」という実践的真理観を引き出しました。つまり、哲学の根本問題である「思考と存在の同一性」の「思考と同一となる存在」の側面を「概念と存在の統一」として、提起したのです。
 また、アンセルムスの議論から有名な「普遍論争」が起こりました。これは、「普遍」は実在するのか、それとも名前だけなのか、についての闘争で、実在論と唯名論の対立として展開されました。(鯵坂記念講演で紹介された問題です)

③「最盛期」のスコラ哲学
 トマス・アクィナスはアリストテレス哲学を取り入れ、スコラ哲学を体系化した「神学大全」を著しました。彼はその中で、「形相」と「質料」のカテゴリーを取り上げ、両者の比率の違いによる、ヒエラルヒー的自然観を打ち立て、それが封建的位階社会を支えるイデオロギーとなりました。また「信と知の矛盾」を認めつつ信を優先せよと主張しました。シゲルス・デ・ブラバンティアは、「知を優先せよ」と説き、世界はそれ自身のうちに法則性、必然性を持つと、唯物論的自然観を提唱しました。

④「衰退期」のスコラ哲学
 近代哲学、近代科学に道を拓いた先駆者はウィリアム・オッカムであり、彼は「信と知の完全な分離」、「哲学の神学からの独立」を主張しました。またジャン・ビュリダンは「物体の運動」に対しアリストテレスの目的因を排除し、近代力学の先駆者になりました。彼の「ビュリダンのロバ」をマルクスは大変気に入り、全集の中で不決断の例として4ヶ所挙げている事も紹介しておきます。

⑤世界観的確信を
 一般にスコラ哲学は「神学の侍女」として、「哲学の暗黒時代」と評価されます。しかしそうした「哲学の堕落期」にあっても、その中で真理探求の脈々とした流れがあった事も見落とす事は出来ません。スコラ哲学の中での「信と知」、「神学と哲学」をめぐる闘争が近代哲学において再び「真理探求の哲学」として再生(ルネッサンス)する姿を見るとき「真理は必ず勝利する」という命題は、スコラ哲学においても実証されたといって過言ではないでしょう。今回の講義は、「世界観的確信とは何か」を考えるうえでも、大きな示唆を与えられるものでした。
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